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【神戸特集vol.18】三宮「HOP STAND 三宮店」楽しく美味しいを届ける。なんかおもしろそう、と立ち寄る一軒。

生田ロードとトアロードのあいだ、ガラス張りの店先が、道行く人の目にとまる「HOP STAND 三宮店」。2015年2月、まだ誰も通らないような通りだったこの場所に生まれた。六甲山系の銘水で仕込む六甲ビールを醸造所から樽で直送してもらい、グループの焼き鳥ブランド「にはとりや」監修の串と合わせる。カウンター8席を含む24席の小箱に掲げられたコンセプトは、「街の寄り道ステーション」。現在この店に立つ店長・山口由夏氏は、神戸生まれ神戸育ちのパティシエ出身。ここに来るまで、ビールをほとんど飲まなかった。運営する株式会社シナジーカフェ取締役の川井雄太氏、シニアマネージャーの天野雄太氏とともに、開店から11年を数える、この店のいまを伺った。


フースタ関西|【神戸特集vol.18】三宮「HOP STAND 三宮店」楽しく美味しいを届ける。なんかおもしろそう、と立ち寄る一軒。

左から 天野雄太氏(株式会社シナジーカフェ シニアマネージャー)・山口由夏氏(HOP STAND 三宮店 店長)・川井雄太氏(株式会社シナジーカフェ 取締役)



1. お店を始めたきっかけ

山口氏の来歴は、一貫して「飲食のことだけ考えてきた」人生である。

「一番最初から。高校生から働き始めがもう飲食でした。」

「飲食以外の仕事を考えたことが人生でなくて。何でと言われたら、なんでかわかんないですけど。幼稚園の頃からパティシエ、ケーキ屋さんとかっていう気持ちがずっとあって。そこから夢も変わらず、親も学校に行かすつもりでいてくれたっていうのもあって、もう飲食以外の選択肢が自分の中になかったんです。」

「食べるのも作るのも好きみたいなのは、一生ずっと変わってないです。飲食しかなかったぐらいの感じですよね。自分に他のことをできるとは思ってなかった。」

製菓の専門学校を出て、パティシエとして現場に立った。ホテルで6年あまり、レストランで2年。コロナ禍の時期には、いくつもの店を渡り歩く。その裏側には、はっきりとした目標があった。

「最終的に、35歳あたりで自分のお店を出したいなっていう目標があったんで、それに向けて現場でいろいろさせてもらったんです。」

ところが、現場を重ねるほど、足りないものがはっきりと見えてくる。

「経営とか数字とかさっぱりだったんで、そういう部分で店長業務したことないなって。店長の経験を積ませてもらえるところを探したとき、シナジーカフェと出会った。」

入社の動機は、意外なほど淡々としている。

「私がこの会社に入った目的として、やりたいことをやりに来たというより、知らないことを勉強しに来た。が近いかもしれないです。」

入社時の配属は、系列の「デリランテ」店長としての採用だった。応募の決め手は、業態のジャンルだったという。

「イタリアンっていうジャンルだと、今までもちょっと働いたことがあったので、それで応募して。」

そこで1年を過ごしたのち、現在の店「HOP STAND 三宮店」に移る。150席規模の大箱から、24席の小箱への異動である。

「いろんな人員配置がある会社なので。その人がどこに向いてるかというか、どこでどういう結果を出すかって見ている感じでしょうか。」

取締役でもある川井氏が答える。

「人事異動の前に社長面談があるんですけど、そこである程度の希望であったりとか、ヒアリングするんです。それに応じた形で、なるべく本人がやりたいことに合わせてっていうのが多いですね。」

「独立希望っていうのは知ってて、やっぱり店を運営するとか、勉強をしたいっていうのも聞いてたので。こっちの方が楽しんでできるんじゃないかなって。」

告げられた店は、偶然にも客として何度か足を運んでいた店だった。

「異動になると思ってなかったんで。正直、ここのお店って言われたときに、ちょうどお客さんとしてもこのお店に何回か来てたタイミングだったんで、自分がすごくやりやすい環境かなっていうのはあったんですけど。」

ただ、希望に出すという発想はなかった。理由は明快だ。

「実は私、元々ビールをほとんど飲まない人間で。そういう意味でも、ここを希望に出すっていうことがあんまり頭になかったんです。」

クラフトビール専門店の店長に、ビールを飲まない人間が就く。天野氏が山口氏と出会うのは、彼女がこの店に配属されてからのことだ。当時は担当エリアが別で、面識もほとんどなかったという。その天野氏が、着任後の彼女に抱いた印象は、ビールとは関係のないところにあった。

「人と会話するの好きやなっていう。カウンター商売の方が向いてるんやなっていう感じはしましたね。そこはもう今でも変わらないですけど。それが一番なのかなと。」

山口氏自身も手応えは持っていた。

「現場の様子とか見て、いろいろチャレンジさせてもらえる会社なんだなって感じました。小さいお店で働く機会は今までにもあったので、カウンターのお店に関してはなじみがあるというか。すごく頑張りたいなっていう思いできました。」

一方、店そのものの出自は、2015年2月にさかのぼる。当時、この通りに人通りはなかった。

当時の状況を川井氏が語る。

「ここを最初オープンしたときは、本当、誰も通らないような通りだったんです。最初はそこに出店することで、街が明るくなって歩きやすくなったとか、そういうことを言われることもあったので。そこは出店してよかったなって思ってます。」

路地裏での出店は戦略なのかと尋ねてみたところ、川井氏は首を振る。

「ここにこういう店があったら面白いことが起きるんじゃないかな、ってところまでです。こういう感じの業態があったら面白そうだな、人が集まってくれそうだな、っていうところから始まります。だからブランドがいっぱいあるんですけどね。」

株式会社シナジーカフェとして、HOP STAND 三宮店の位置づけもある。

「従業員が気軽に自分の会社の店を利用するっていうのは、すごくいいことだと思うんで。そういうふうにしていきたいなっていうのはありますね。」

「それはお客様にとってもそうなんですけど。みんなとの待ち合わせの前にちょっと寄るとか。もちろん食事もそうですし、2軒目、3軒目にふらっと、中締めの一杯として飲んで帰るとか。そこに神戸の方ではない人を連れてきても、こんな六甲ビール美味しいなって言ってもらえるようなお店を目指していきたいなと思ってます。」


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生田ロードとトアロードのあいだ。青い外観とガラス張りの店先が通りに向かって開く。




2.こだわっていること

店名が示すとおり、主役はビールである。醸造所から樽で直送される六甲ビールを常時揃える。

山口氏が店長として解説してくれた。

「数あるクラフトビールの中で、一番ベーシックなものから、ちょっとコクがあったり、飲みやすい黒ビールだったりっていう、一番枠を捉えた4種類が常にあるような感じです。」

レギュラーの顔ぶれは、柑橘ホップの香りが立つ「BAY ALE」、焙煎モルトの余韻が残る「BROWN ALE」、ダークモルトの甘いコクを持つ「PORTER」、ダイダイの香りとコリアンダーのスパイシーさをまとった「WHITE”DAIDAI”ALE」。そこに季節のビールが入る。

「季節に合わせて新作を入れたり、他のレギュラーのラインナップをちょっと入れてみたりして。お客さんに飽きられないというか、この時期はこれがあるから行こう、ってなるようなものを入れてます。」

そしてもう一つ、この店にしかないものがある。数年前から続く、オリジナルのブレンドビールである。

「季節ごとに作っているものがあって。六甲ビールを使ってビアカクテルみたいにしたり、ビールとビールを混ぜて、みたいな感じで、いろんなアプローチをしてみる。」

川井氏のおすすめも、これだった。

「季節で春ブレンド、夏ブレンド、もっと細かいものもありますけど、僕らの店でしか飲めないです。」

「秋ブレンドは、上に紅葉を乗せたり。季節感も感じて喜んでもらってます。おすすめです。」

この取り組みは、山口氏が来る前からのものだ。だからこそ、彼女はそこに店の歴史を見る。

「お客様に浸透してて、『あれいつ始まるの』とか『いつ仕入れるの』とかって声を掛けていただきます。やっぱり私の前に働いてらっしゃった店長の方々が、しっかり営業されてる中で、お客様とコミュニケーションを取ってくださった結果と感じてます。」

ビールが飲めなかった店長の、おすすめを聞いてみた。

「クラフトビールの入口が六甲ビールだったからだと思うんですけど、飲みやすくなった。」

「このお店でもホワイトダイダイエールっていう、すごい飲みやすいのがあるんですけど。やっぱりこういうのは、私みたいにあんまりビールを飲めない人とかにおすすめしますね。」

すすめ方そのものにも、この店らしさがある。

「すごく飲みやすい中でも、飲みやすいの伝えかたに種類があるなって、やっぱりお客さんに説明して、お客さんが飲んだ感想を聞いた上で、こういうふうに感じられる方もいらっしゃるんだなっていう情報を集めて。じゃあこういう人に説明するときは、このワードとこのワードでいこうとか。そういうのは人によってちょっとずつ変えたりしてます。」

天野氏のおすすめは、神戸産の山田錦を仕込みに使う一杯だった。

「ベイエールは、やっぱり山田錦を使ってるんで。神戸のものでやりつつ、っていうのは売りなのかなと。男女問わず好きな感じの味だと思います。」


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季節や気分によるクラフトビールの飲み比べも楽しみの一つ。



山口氏も頷きながら答える。

「本当に万人の好みに合う。飲み放題もあるんで、それで全種類を頼まれてから、結局ベイエールに戻ってくるみたいなことが結構あります。」

「スタンダードの中でも、飲みやすいに分類されると思うんですけど、今の六甲ビールの傾向として、あんまり苦味がガツンって強いタイプのものがないので。」

その意味はこの店の料理と合わせたときに分かってくる。

「あまりビールが主張しすぎると、食事に合わせにくくなってくる。六甲ビールの飲みやすさだったら、焼き鳥とか、塩味でもよく合う。」

串は焼き鳥専門「にはとりや」の監修。ラム肉専門「ひつじの一休」のラムジンギスカン串も並ぶ。11年という時間が、メニューに厚みをつくってきた。


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多彩な飲食業態を持つからこそ用意できる自慢の焼き鳥。



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香ばしく煎った特製スパイスで味わうラム肉の串。



「11年やっているお店なんで。その間にいろんな試行錯誤があって、めちゃくちゃ精査されていった結果のものが、今このグランドメニューにあるなって。」

「自分も食べたとき、どれも美味しいなって思いましたし。季節メニューは考えますけど、やっぱりその安定感がすごいなっていうのは自分でも思う。」

「長い間いろいろあって。これ置いたらどうだろうっていうのも、他店舗のいろんな商品を取り入れて、これは違うなとか、これはここにハマるなっていうのを、すごい繰り返した跡がある。そういうのはすごく感じるので、どの料理もおすすめしやすいです。」

焼き鳥のほか、よく出るものとして「淡路どりの毛沢東チキン」が挙がる。

「唐揚げにソースをかけて、会社で作った毛沢東スパイスとか、諸々いろんなスパイスが入った、ちょっと辛味のあるような、粗めのザラザラのスパイスをかけて食べていただくんですけど。」

「それも私、あんまりこういうのって頼まへんなって思いながら食べたら、めっちゃうまいなって。ビールで絶対食べたいってなるなっていうのは、提供しててすごく思うメニューです。」

「結構いろんな飲食店で働いてきて、いろんな食材を見てきたと思ってたんですけど、全然こんなんあるんやなっていう、そういう出会いもあるから、すごく面白いなと思いながら仕事させてもらってます。」


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ここに来たら一度は注文したい毛沢東チキン。



店づくりについては、川井氏が会社の設計思想を明かす。

「一応、各店舗コンセプトがあるので。商品コンセプトだったり、内装のコンセプトだったり、サービスのコンセプトも全部あるので、それに基づいてやっていく感じです。」

「大枠から大きく外れてなければ、店舗で好きなことしていいっていう応援体制の中で、それぞれの違いが出てくるのかなと思います。」

内装はデザイナーと詰めていく。だからブランドごとに、はっきりと表情が違う。

「デザイナーの人とミーティングしながら作っているので、そういう面で統一感があるのかなと。」

エリアを預かる天野氏に、系列他店との違いを聞いた。天野氏が見ているのは、この店に加えて「食堂 勿ノ怪」と「HOP STAND 神戸モザイク店」となる。

「やっぱり、ふらっと寄れるところが強みかなって。一杯だけ飲んで帰っても全然いいというか。入りやすさっていうのは、この店の強みの部分。そこが、よそとは違う感じですね。」

「よく2軒目、3軒目の後に戻ってきてくれる人もいるんで。それは、この店ならではかなって感じてます。」



3. スタッフとの関係で大切にしていること

着任時の山口氏が最初にしたことは、教えることではなく、見ることだった。

「接客の経験自体が結構あったので、凝り固まってる部分はあるなと感じてたんです。ここに来たときに、スタッフは1年以上働いてる人ばっかりだったと思います。このお店に合わせた接客をすごい上手にしていたので、もうその人たちを見て学ぶ部分が多かったというか。」

「お店がこのサイズなので、端からでも声を出せば届くっていう分、お客様の荷物が多かったら、上の棚も使ってくださいね、とか、そういう目の届く範囲での声かけもすごくしやすい。」

「お客様の変化に気づきやすい。そのたびに声をかけてみる。言われる前に行動するっていうのが、もう既にスタッフには身についてるなって。」

「私はただ、最初の半年、それを見て学ぶっていうところからでした。」

そこから、新しいアルバイトを迎える際に、初めて自分の言葉が出てくる。

「自分が見て学んで、こうした方がいいなっていうところも伝えつつ。でも、お客様と接する数が増えないと、わからないことって多分あると思います。」

「ひたすらお客様と会話するように促してみたりとか。案内の仕方、めちゃくちゃ丁寧に話すのも接客として正解な場合もあると思うんですけど、ここはちょっとフランクに話しかける、っていう細かいアドバイスはさせてもらいました。」

「笑顔もそうですし、声のトーンだったりとか。同じ言葉でもトーンを変えると、業務的じゃなく、話しかけてるっていう感じで受け取ってもらえるので。細かいなって思われてるかもしれないですけど。」

また伝え方には、一つだけはっきりした原則がある。

「できてないことはできてないと、言葉を考えながら伝える。言わないっていう選択肢はないので、直接本人に必ず伝えます。」

できたときはもっと感情をこめて伝える。

「できてなかったことが、できたってときは積極的に『今めっちゃ良かった』みたいな。」

もう一つ、この店ならではの作法がある。スタッフを客との会話に溶け込ませていくことだ。

「世間話の中で、その人が今どういう状況なのか、テンションがどうなのか、最近どういうことがあったのかっていうのも踏まえて、全部聞いた上で。お客さんと喋るときに、『先週旅行に行ってきたみたいで』とか、『最近やっとビール飲めるようになったらしいんですよね』とか、そういうのを交えながら、お客さんとの会話にその子を溶け込ませていったり。」

「その中で、『君すごくいいね』って褒められると、モチベーションにもなると思います。お客さんと接する機会を多くすることは、すごく意識してるところですね。」

エリアを見る天野氏の立ち位置は、思ったより現場に近い。

「社内の取り組みのなかで、部活動もやってて、そこにアルバイトも巻き込んでやってます。だから、そんな距離を感じることは無いですね。」

「僕が現場に入ることもあったんで、一緒に働く機会っていうのは全然あった。あんまり変わらない感覚で接して、その中で教えたいこともあって、希望を聞きながら、それに対応するっていうのは、どこの店舗もそういう感じでやってるかなと。」

その天野氏が、ずっと変えていない軸がある。

「店長からまず言われたことを第一にやりながら、その子らが社会に出たときに困らないようにっていうのは、日々、昔から考えは変わってない気がします。」

「礼儀作法であったりとか、そういうところを学んでもらったり。人と接することで覚えていくっていうのが、この飲食の一番の良さだなって感じてるので、そこはずっと変わらず、そういうのを僕は大事にしてやってます。」

会社としての線引きは、川井氏が引く。

「店のコンセプトがしっかり決まってるので、それに大きく外れない範囲であれば、店舗スタッフ、店長、マネージャーがやりたいことを実際やるのがいいと思ってて、それを大事にしてます。方向がずれてるなってところだけ、少し口を出させてもらったりはしますけど。」

「アルバイトの指導方法とかに関しても、こうやった方がいいなとか、いろいろやってもらって。店長に合うやり方もあると思うんで、それをやってもらうのがいいかなと。」



4. 印象に残るお客様とのエピソード

客層は以前だと40代前後の男性が中心。サラリーマンが多かった。だが、ここ1年で変化があった。山口氏がこう思い返す。

「最近は女性も増えてるんじゃないかな。私が店長として立ってる頻度が増えると、やっぱり女性1人でも入りやすくなってると思います。」

「週末とか14時から開けてるんで、ママさんとかどこか行った帰りに、晩御飯まで余裕あるから、ちょっと一杯だけって言ってくれる。若い女の子も1人で飲んで食べて帰ることも結構あるんで。それはこの1年で増えたかなと思います。」

そして、この店ならではの客層もある。

「ここで働いて初めて知ったんですけど。出張が多い会社さんで、ビールが好きな人は出張に行くたび、そこでの地ビールってどこで飲めるんだろうって調べて、日本全国のクラフトビールを飲んでるみたいです。」

頻度はさまざまだ。よく神戸に来る人もいれば、年1回、3年に1回という人もいる。それでも、彼らはここに来る。

「そういう方々がここに来てくれるっていうのを聞いたとき、その時々の店長がすごい楽しくて、いい接客をして、印象的なビールを提供してるっていうのが、私まで繋がってるなって、ものすごく感じてて。」

「昔こういうビールがあったよねとか、こんなことがあったんだよとか、もうちょっと料理のメニュー多かったかも、っていう昔の話を、お客さんから聞くというか。」

聞いた話は、そのまま次の会話の種になる。

「昔はこういう感じだったらしいですけど、今はこうなんですっていう話をしてみたり。もしかしたら以前この場所に、違うこういうお店があったんで、こうなってからだったら何年前かもしれないですねとか。こう、お客さんと昔の記憶を探っていったり。」

またビールについて知識を深める際、山口氏がまず手をつけたのは、造り手を知ることだった。

「ビールを飲んだり、調べたり勉強するところから始めたんですけど。やっぱり来られるお客様はみんなビール好きな方が多くて、私も最初は広く勉強しないとって思ったんですけど、やっぱり六甲ビールを飲みに来ているお客様が多い。」

「六甲ビールっていう会社のこと、商品についてとか、直接ビール会社の方々とお話したりして。どういうことにこだわってるとか、そういう話をしていく中で、その作ってらっしゃる方の気持ちとか思いっていうのを、お客様にも話すと、すごい喜ばれます。」

「ただ買って飲むだけじゃ知れない。そういう話を聞きながら飲むと、すごい楽しそうに、美味しそうに飲んでくださる。」


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端から声を出せば届く距離感がこの店ならではのサービスをつくる。




5. これからやってみたいこと

年間の大きなイベントは、会社の計画としてすでに決まっている。山口氏が考えているのは、その隙間の埋め方だ。

「この店舗だけの日を決めて、こまめなイベントに取り組んでいけたらなっていうのがあって。先日1回それをやってみたんですけど。」

その1回目が、8月後半だった。素材は、店の中にあった。

「前回に関しては、スタッフにタロット占いをできる子がいたんで、一緒に頑張ってもらいながら。」

「夏の8月後半だったんで、ふらっと寄ってもらって。ちょっと夏を感じたいみたいな、そういう人が集まってくれたらいいなと思ってやってみたんです。」

「メニューの中にお祭り要素を入れて、ドリンクに花火をつけてみたり、ガラス窓に大きく書いてもらったりとかして。」

「せっかくのガラスなんで。外から見て、なんかやってるな、盛り上がってるな、楽しそうって思ってもらえる瞬間っていうのを、増やせる方がいいなって、すごく今回思いました。」

結果は告知の常識をひっくり返す。

「告知して、それを見て来てくれたお客さんより、その日に通って立ち寄ってくれたお客さんが圧倒的に多かった。」

「雰囲気作りっていう部分では、何かわからへんけど楽しそうっていう、引っ張るパワーみたいなものを、もっともっと上げていきたいなって。そういう意味では、でっかいイベントの間に簡単なイベントも増やしていけたらなと思います。」

会社としての着地点は、川井氏がコンセプトに引き戻す。

「コンセプトが『街の寄り道ステーション』。寄り道してくれる人をたくさん増やすっていうところが、一番目指すところですね。」

「もっとファンを作っていくということで。このお店があるからこそ、ここに出店してほしいなと、お声がけいただくことが、僕らが一番目指すところかなと思いました。」

「店長自身がやりたいことと、うまく合わせながら。それを実現できるところまでいきたいなと思っています。」


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ゆったり話せる個性的な席づくりもおもしろい。




6. この街(神戸)への想いを聞かせてください

山口氏は、神戸で生まれ、神戸で育った。だから、比べるものがない。

「外を知らないから比較対象があまりないんですけど。」

それでも、言葉は具体的だった。

「でも、やっぱりすごく人と人との距離も近くて、いろんな飲食店があって、すごい回転も早かったりするんですけど。でも、住み心地も良いところで。」

そして、こう言い切る。

「質的には大阪に劣ってないかなって思ってます。」

「もっともっと、兵庫県に行くと神戸・三宮には寄りたいよね、って思ってもらえるように、何か補えるようになりたいなって。」

天野氏は少し考えながらも、地形の話から入る。

「神戸には、船で来る方もいます。山があって海があってっていうのは、神戸の良さかなと。海外からクルーズで来られる方も多いんで、そこはもっともっと増えてもらえたら楽しいかな。」

そして、好きな神戸の風景がある。ハーバーランドの店に立っていた頃の話だ。

「店舗で働いていて、景色が綺麗でいいなって。夜の景色とかもすごい。海があって山が一緒にある景色とかないので、すごいなって改めて思いました。」

「神戸モザイクで働いていて、外に出たとき、やっぱりいいなと思ったときもありました。」

「あんまりない景色なんですよね。」

川井氏の言葉は、街のサイズについてだった。

「ちょうどいい距離感の街なんで。その辺はすごいなと思います。」

そして、会社としての立ち位置を、はっきりと述べた。

「神戸っていいなって思ってくれる人を増やしていきたい。観光で来られた方もそうですし。そこに対して僕らができることっていうのは、食を通じてそう思ってもらうことしかないので。そういうふうに貢献していきたい。食で貢献していきたいなという思いです。」

2015年、誰も通らない道に1軒のビアバーが灯った。11年のあいだに、通りは人の通る道になり、年に一度しか神戸に来ない人がわざわざ立ち寄る店になった。いまその店に立つのは、ビールを飲まなかったパティシエである。彼女が客に話しているのは、ビールの苦味の強さではなく、それを造っている人の気持ちだ。会社が掲げる「おいしく、たのしく、おもしろく」は、この24席では、ガラス窓の外を歩く人の「なんかおもしろそう」に翻訳される。街の寄り道ステーションとは、たぶんそういう場所のことを言うのだろう。


フースタ関西|【神戸特集vol.18】三宮「HOP STAND 三宮店」楽しく美味しいを届ける。なんかおもしろそう、と立ち寄る一軒。



■会社情報

会社名:株式会社シナジーカフェ(Synergy cafe Inc.)

代表者:春名 良則

本社:〒650-0012 兵庫県神戸市中央区北長狭通4-3-5 ドムス北長狭3階

TEL:078-335-5715

創業:2007年12月(にはとりや三宮店 創業)

設立:2010年3月

事業内容:飲食店の経営

ミッション:外食をおいしく、たのしく、おもしろく!

ビジョン:住む、遊ぶ、働く、において魅力的な街づくりに貢献する

バリュー(5原則):変化し挑戦し続ける/面白いことを追求する/最高の成果を最速で生み出す/信頼を築く/顧客の立場で考える

運営ブランド:にはとりや/デリランテ/HOP STAND/ぎょうざの一休/ひつじの一休/食堂 勿ノ怪/炭と蕎麦 那由多/串カツの大東洋 ほか

WEB:https://www.synergy-cafe.co.jp/



■店舗情報

店名:HOP STAND 三宮店

店長:山口 由夏

所在地:〒650-0012 兵庫県神戸市中央区北長狭通2-9-5 1F

TEL:078-321-6656

オープン:2015年2月27日

営業時間:月〜金 17:00〜23:30/土 14:00〜23:30/日 14:00〜23:00

定休日:不定休

席数:24席(カウンター8席、テーブル4卓、テラス2席)

アクセス:JR・阪神元町駅から徒歩約3分

業態:クラフトビール専門ビアバー/焼き鳥

Instagram:https://www.instagram.com/hopstand_sannomiya_0227/

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