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【神戸特集vol.11】三宮「神戸餃子 オレギョ」で思い出した、“人に会いに行く店”という原点。

JR三ノ宮駅から北へ徒歩3分。中山手通の路地を一本入ると、赤い店構えが目を引く「神戸餃子 オレギョ 中央店」がある。神戸に根づいた餃子文化を受け継ぎながら、「女性がひとりでも気軽に入れる餃子店」という一点を貫き、神戸・大阪の5店舗へと広がった。運営するカーサ株式会社、代表取締役のJohn氏は、スポーツインストラクターから美容業界の営業職を経て、この道に入った。順調に見えた店舗展開、コロナ禍で突きつけられた現実、そして代表就任。遠回りの先で取り戻した原点と、この街への想いを伺った。


【神戸特集vol.11】三宮「神戸餃子 オレギョ」で思い出した、“人に会いに行く店”という原点。

神戸餃子 オレギョ 中央店/カーサ株式会社 代表取締役:John氏



1. お店を始めたきっかけ

John氏のキャリアは、餃子とはずいぶん遠いところから始まる。兵庫県で生まれ育ち、スポーツ学校を経て、卒業後はスポーツジムのインストラクターになった。

転機は、担当していた会員のひとことだった。「うちで働かへんか」と声をかけてくれたのは、美容室向け商材を扱う会社の社長。まったく畑違いのまま、美容室オーナーを相手にする営業職へ。

「『商品をおろす営業ではなく、美容師さんのお店の経営をサポートできる営業マンになりなさい』と言われて育ちました。商品を買っていただく代わりに、オーナーさんの困り事や悩みを一緒に共有させてもらう。勉強熱心な会社で、外部研修にも行かせてもらって、マネジメントも学ばせてもらいました」

手応えはあった。ただ、ひとつだけ埋まらないものがあったという。

「美容師さんは、お客さんを綺麗にして『ありがとう、めっちゃ可愛くなった』と直接言ってもらえる。僕らはその手前にいるので、エンドユーザーの笑顔が見えないんです。あの距離が、うらやましくて」

もうひとつ、悔しさもあった。2店舗目を出したいというオーナーの相談に、十分に応えきれなかったこと。「僕には技術もないし、経営した経験もない。伝えることしかできなかった」。幼い頃から漠然と抱いていた「社長になりたい」という夢が、そこで輪郭を持ち始める。

選んだのは飲食だった。理由はシンプルに「お酒も好きやし、食べるのも好きやったので。自分が飲食をやって、僕のつくったものをお客さんが食べて飲んでくれたら、それはいいな」と。

会社を辞めた後、しばらくは無職だった。そこへ舞い込んだのが餃子の話だ。縁をつないでもらい、神戸・新在家にある「俺の餃子」で修業を行う。のれん分けを受け、2014年2月、トアウエストに1号店を開いた。物件は毎朝パソコンで探し続けて見つけた元・中国料理店の倉庫。

「不動産屋の方に『12時から見に来る人がいるので13時でどうですか』と言われ、嫌な予感がした。かけ直して『11時に行っていいですか』と。結果、それで押さえることができました」

当初は自身が代表ではなく、共同創業者に雇われる形で現場のトップを担った。先回りしてつかんだ一軒が、すべての始まりとなる。


【神戸特集vol.11】三宮「神戸餃子 オレギョ」で思い出した、“人に会いに行く店”という原点。

明るく清潔感のある店内




2.こだわっていること

「餃子は、料理じゃないんです」とJohn氏は言う。「鍋を振るわけでもない。仕込んだものを焼く作業なので、極端に言えば誰でもできる」。この業態だからこそ多店舗に広げられる。出発点はその発想だった。

一方で、店づくりには前職の経験がまっすぐ生きている。

「前の会社は、何でも女性向けにマーケティングをしていたんです。でも当時の餃子店って、街の中華屋さんみたいなイメージが強かった。それがちょっと気になって。女性がひとりでも気軽に入れるお店をコンセプトにしました」

ビールと餃子を食べて、さっと帰る。愛想よりも速さ。神戸に根づいたその文化を否定するつもりはない。「あそこの餃子は、ああいうコンセプト。美味しい餃子をパパッと食べて帰れたらいい、という店なんです」と敬意を示したうえで、意図的に別の道を選んだ。清潔感のある内装、明るい照明、カフェのようなお手洗い。狙いどおり、女性客が足を運ぶ店になった。


【神戸特集vol.11】三宮「神戸餃子 オレギョ」で思い出した、“人に会いに行く店”という原点。

研究して作られた餃子はオレギョでしか食べられない味が揃う



餃子の幅も、この10年で大きく広がる。焼餃子、しそ餃子、水餃子から始まり、大阪・ハービスENTへの出店にあたっては「ワインとペアリングできる餃子」を掲げ、副社長でもある沼道氏の手により「4種のきのことバター餃子」が開発された。John氏自身も、京都・祇園の人気店「ぎょうざ歩兵」に通い詰めた時期があったという。

「キャベツと白菜に、生姜をばーっと。『こんなに使うんですか』と聞いたら、すりおろし半分、刻み半分だと。それでうちも、しょうが餃子をつくりました」

そして、いちばん語りたくなる一皿は、思いがけない偶然から生まれた。セントラルキッチンで、しそ餃子の餡に調味料を入れ忘れた日のことだ。味のしない、しそ餃子を置いていたところ、あるスタッフが茹でて食べてみたという。

「『これ、めちゃめちゃうまいですよ』って。その発想はなかったなと。茹でると100度までしか上がらないので、食べたときに、しその香りがぶわっと広がって、消えきらないんです」

鶏胸肉を使ったあっさりとした餡。焼くのではなく茹でる。失敗作が看板メニューのひとつとなった。今では焼餃子・しそ餃子・しょうが餃子・きのこ餃子が並ぶ「餃子4種盛り」が、この店の入口になっている。


【神戸特集vol.11】三宮「神戸餃子 オレギョ」で思い出した、“人に会いに行く店”という原点。

神戸牛の牛脂を練りこんだ豚ミンチとたっぷりの野菜で仕上げた自慢の焼餃子



【神戸特集vol.11】三宮「神戸餃子 オレギョ」で思い出した、“人に会いに行く店”という原点。

ヘルシーな鶏むねミンチに白菜・しそをふんだんに合わせた、しそ餃子。




3. スタッフとの関係で大切にしていること

現在、社員のうち男性は副社長の沼道氏とベトナム人スタッフの2名。ほかの6名は全員女性だ。これは偶然ではない。

「どの業界もそうかもしれませんが、飲食は女性が活躍しにくい。長時間働かなきゃいけない、休みが少ない。結婚や出産となれば、男性以上に女性のほうが影響を受けます。だから、女性スタッフが楽しく、安心して働ける会社をどうつくれるか。そこはすごく意識しています」

そのために自分がすべきことは、意外にも「引くこと」だと言う。

「男の人はすぐ『これはあかん』『こうあるべき』と言いたくなる。理屈で知りたくなるんですよね。でも女性は感覚でやる。だから、その男性的なものを自分の中からいかに排除できるかを考えています。会社の枠だけはちゃんとつくって、あとは自由にやってもらう」

女性を採用することで、発想の幅は接客にも広がった。そしてもう一人、絶対に欠かせない存在がいる。長年ともに働き、代表就任と同じタイミングで副社長となった沼道氏だ。

「誰が抜けても手立てはあるようにしているんですけど、彼が抜けると僕には代替案がない。ファンづくりが僕は苦手で、彼のほうがずっと上手なんです。この10何年、生かしきれずにいる。いつか世に送り出したいと思っています」



4. 印象に残るお客様とのエピソード

印象に残る風景を尋ねると、返ってきたのはコロナ禍が明けたときの店内だった。

「お客さんが、待ってましたと言うように来てくださって。本当にありがたかったです」

けれどJohn氏は、そこで手放しに喜べなかった。街のあらゆる店が一斉に再開し、日常が戻っていく。そのとき気づいたのは、「自分の店に強みが何もない」ということだった。

多店舗展開のためにオペレーションを整え、アルバイトだけでも店が動く仕組みをつくった。実際、店は回っていた。

「でも、回ってるだけなんですよ。回ってるだけやのに、お客さんは来てくれてはった。それに気づけなかった。順調なときって、自分のやってることがはまってると思ってしまうんですよね」

1号店、2号店、梅田・ハービスENTでの出店。数字は伸び、少し天狗になっていたと率直に振り返る。代表に就任し、副社長の沼道氏と二人で0から考え直したとき、思い出したのは開業時に自分で書いた経営理念だった。「“あの人に会いに行く”ようなお店をつくる」

「お客さんは餃子を食べに来てるけど、人に会いに来てるんですよね。僕自身もいろんなお店に行きますけど、なんでここに通ってるんやろと思うと、店員さんのちょっとした気遣いだったりする。『こんなところまで見てくれてはるんや』と。逆に、美味しいのに行かなくなるお店も、理由は店員さんなんです」

自分で書いていたのに、忘れていた。「食べてほしいのは当たり前で、来て楽しい、が大事やなと。恥ずかしながら、代表に就任してようやく思い出しました」。原点は、そこにあった。


【神戸特集vol.11】三宮「神戸餃子 オレギョ」で思い出した、“人に会いに行く店”という原点。

女性が入りやすい雰囲気はカウンター越しの会話も楽しめる




5. これからやってみたいこと

これからについて聞くと、まず出てきたのは店舗数の話ではなかった。

「日本は人口がどんどん減っていく。そんな中で店を増やしていくのは、時代に逆行しているなと思うんです。パイが少ないのに、と」

週に3回飲みに出ていた人が、月に3回になる。終電も早まった。仕事終わりから終電のあいだに回れるのは、多くて3軒程度。「開けたら来るだろう」という前提は、もう成り立たない。

「その少ない中で、選んでもらえるお店にならないと。需要と供給のバランスは、常に見ておかなあかんなと思っています」

そのうえで、はっきりとした計画がひとつある。3年後、ベトナム・ホーチミンへの出店だ。きっかけは、やはり人だった。来日して6〜7年、日本語も堪能な20代のベトナム人社員。飲食にも対象が広がった特定技能2号を一発で取得し、いまは店長を務める。将来はベトナムに帰りたいと聞いていた。

「それやったら、俺が店を出すから、そこで一緒にやろうと。この1〜2年はベトナムに通って人脈と地盤、仕入れ先を整えているところです」

現地で感じるのは、成長期の熱気だという。人口は1億人を超え、年齢構成のピラミッドもきれいな三角形を描く。「僕はその時代にいたわけじゃないですけど、昭和の日本が伸びていた頃はこんな感じやったのかな、という雰囲気なんです」。水餃子の文化はあるが、焼餃子はまだ薄い。

「ベトナムの方にも愛される、日本人にも愛される。そんなハイブリッドなお店ができたら面白いなと思って。その上で展開していけたら」と期待する展望は、実現に日々近づいている。



6. この街「神戸」への想い

最後に、この街への想いを尋ねた。

「京都・大阪・神戸と言われますけど、三都になりきれていない気がしていて。僕自身はすごく好きなんです。面白いお店もあるし、山も海も近い。だからこそ、もっと知ってほしい、もっと遊べるんだよと」

2014年からトアウエストで店を続けてきた実感として、街を歩く人は当時より減った。だから、動くことにした。背中を押したのは、二宮で街バル「VAMOS」を立ち上げた江顕仁氏だ。(※江氏の記事は神戸特集vol.6にてご覧いただけます。)

「彼がすごいなと思ったのは、“自店を流行らせる”ではなく“街が流行ったらいいんじゃない”という発想なんですよ。街に人が来たら、自分の店にも来る。その順番で考えられる人って、あまりいない。それで『ほな、トアウエストでもやらせてくれよ』と」

2025年10月、「VAMOS!TOR WEST ノミニイコウ」が実現する。参加は27店舗。John氏が代表を務めた。

「前回の二宮では、お客さんがいろんな店を知るきっかけになって、次の来店につながっています。イベント前より、地域の店どうしのつながりも濃くなりました」

インバウンドのお客様も、もちろん大切だ。ただ、John氏が思い描く景色は、少し違う方向にある。

「大阪の人や京都の人が『神戸、おもろいらしいね』と来てくれる。岡山の人や姫路の人が『面白いらしいで』と来てくれる。そんな街にしたいんです。地域に貢献していくことで、神戸にたくさん来てもらって、神戸で楽しんでもらえるようになったら」

赤い看板のもとで、今夜も餃子が焼かれている。皮のふちが色づくのを待つあいだ、カウンター越しで交わされるひとこと。John氏が取り戻した原点は、きっとそこにあるのだろう。


【神戸特集vol.11】三宮「神戸餃子 オレギョ」で思い出した、“人に会いに行く店”という原点。

三宮・中山手通に灯る「神戸餃子 オレギョ 中央店」





■店舗情報

店名:神戸餃子 オレギョ 中央店

住所:兵庫県神戸市中央区中山手通1-7-3 サントモビル 1F

【営業時間】
月〜金/17:00-23:00
土・日・祝/16:00-23:00
定休日:なし
※営業時間・定休日は変更となる場合があります。ご来店前に店舗へご確認ください。

予算:¥2,000〜¥2,999

席数:22席(カウンター席・テーブル席)

お支払い:カード可(VISA、Master、JCB、AMEX、Diners)/電子マネー可/QRコード決済可

ご予約:可(078-332-8333)

公式サイトhttps://oregyo.com/

Instagram@oregyo_official

食べログhttps://tabelog.com/hyogo/A2801/A280101/28054341/

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