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【神戸特集vol.10】元町「CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH」創業の地で、ともし続ける想い出の灯り。

元町駅から北へ数分。個性的なショップが軒を連ねるトアウエストに、フランスの路地裏を思わせる一軒がある。「CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH」。神戸を代表する食のブランド「TOOTH TOOTH」が2023年11月、その歩みの出発点となったこの場所に開いた、クレープとガレットの専門店だ。1986年、路地裏の小さな一軒から始まった物語は、阪神・淡路大震災を越え、業態を変えながらも、およそ40年にわたって同じ場所で灯りをともし続けてきた。運営を担う株式会社ポトマックのマネージャー・永田史氏と鈴木幸平氏に、一枚のガレットに込めた想いと、この街への変わらぬ愛着を伺った。


【神戸特集vol.10】元町「CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH」創業の地で、ともし続ける想い出の灯り。

株式会社ポトマック マネージャー:永田史氏(写真右)・鈴木幸平氏(写真左)



1. お店を始めたきっかけ

「1986年に創業した『TOOTH TOOTH』は、このトアウエストの地から始まりました。」

すべての起点は、路地裏の片隅にあった手づくりの小さな一軒。アートやモード、音楽を志す若者たちが自然と集まる、たまり場のような店。創業者である金指光司氏は、もともとアパレルの世界に身を置いていた。そのなかで、店づくりは「場所づくり」の延長線上にあったという。

その店が、飲食を生業として本気で歩み始めるきっかけとなったのが、1995年の阪神・淡路大震災だった。

「震災のとき、炊き出しのようなかたちで食事をお出ししたことがあったそうです。いろいろな声もいただいたと聞いています。それでも、お弁当をひとつ買ってくださったご年配のご夫婦が、『美味しい、美味しい』と涙を流して感想を伝えてくださった。その言葉に、心を打たれたそうです」と永田氏。

食が人の心を支えることを実感したその瞬間から、TOOTH TOOTHは本当の飲食店になったのだろう。震災後はフランス郷土料理の店として再出発し、やがて洋菓子、レストラン、カフェへと世界を広げていく。

そして2023年11月、原点であるこの場所に生まれたのが「CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH」だ。

「長年、多くのお客様に親しまれてきたパティスリーのガレットとクレープ。その魅力をもっと深く届けたいという想いから、専門店をオープンしました。創業の原点であるこの場所だからこそ、TOOTH TOOTHらしい世界観と食文化を、より多くの方に楽しんでいただきたいと考えています。」


【神戸特集vol.10】元町「CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH」創業の地で、ともし続ける想い出の灯り。

トアウエストの街並みに溶け込む「CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH」




2.こだわっていること

一番のこだわりは、素材と焼き上げ。そう二人は口を揃える。

「ガレットは、挽きたてのそば粉をオリジナルでブレンドし、高温の鉄板で一枚一枚丁寧に焼き上げています。外は香ばしくパリッと、中はもちっとした食感が楽しめるのが特徴です。」

そば粉は香り高い兵庫県産のものがベースで、季節に合わせて配合を変える、この店だけのオリジナル生地だ。そばの風味と食感を追い求めた末に辿り着いた、ここにしかない一枚である。

「地産地消は、ずっと大切にしてきました。神戸を中心とした兵庫県の食材を、できる限り使いたいと思っています。」

神戸ポークハム、北坂たまご、六甲マッシュルーム、淡路産牛。ラインナップに並ぶ食材の名前が、そのまま兵庫の食の豊かさを映し出す。神戸という街の成り立ちもまた、味づくりの背景にある。

「神戸は、いろいろな国の文化が混ざり合ってきた街です。フランス料理の枠だけにとらわれず、さまざまな要素を組み合わせられるのが、この街らしさだと思っています。」

クレープもまた、フランス産の小麦をはじめ卵・牛乳・バターを独自に配合したオリジナル生地。焼き上がる瞬間に立ちのぼる甘く香ばしい香りと、もちっとした食感を大切にしている。ガレットには本場ブルターニュにならったシードルを、クレープには紅茶を——。ペアリングまで含めて、一枚をめぐる時間が設計されている。


【神戸特集vol.10】元町「CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH」創業の地で、ともし続ける想い出の灯り。

季節ごとに配合を変える、この店だけのオリジナルガレット。



そして、空間もまた大切なこだわりのひとつだ。

「路地裏にあるフランスの小さなカフェをイメージしました。トアウエストの街並みに自然と溶け込む、居心地の良い時間を演出しています。」

創業者の金指光司氏は音楽をこよなく愛し、店づくりにおいても空間全体の響きにこだわり抜いてきたという。スタッフとお客様が交わす声、食器が触れ合う音——そのすべてを含めて「空間」と捉える姿勢は、いまも受け継がれている。


【神戸特集vol.10】元町「CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH」創業の地で、ともし続ける想い出の灯り。

路地裏のフランスを思わせる、居心地の良い店内




3. スタッフとの関係で大切にしていること

「何よりも大切にしているのは、『感謝を伝えること』と『一人ひとりの存在を認めること』です。」

飲食店はチームでつくる仕事だ、と永田氏は言う。

「それぞれの役割や努力にしっかり目を向け、『ありがとう』の言葉を伝え続けることで、お客様にもその温かさが伝わるお店になると信じています。」

その考え方は、採用のかたちにも表れている。ホールとキッチンを分けて募集するのではなく、「このお店のスタッフ」として迎え入れるのが基本だ。

「どのポジションでもお客様をお迎えする、という意味合いで採用しています。働いていく中で料理に興味を持ち、深くのめり込んでいく子も多いんです。」

一方で、成長の道筋は仕組みとしても整えられている。目標を設定し、面談を重ね、その目標に向かって伸びていく。共通する評価の仕組みが、日々の働きを支えている。

長く働く人も多く、永田氏は17年、鈴木氏は12年——。続けてこられた理由を尋ねると、鈴木氏はこう答えた。

「上司に恵まれました。何でもやってみよう、と言ってくれるんです。自分が考えたものが世に出るというのは、やっぱりすごいことで。東京にも行かせてもらいましたし、マネジメントも商品開発も経験させてもらいました。」

一度離れても、また戻ってくる人がいる。そんな会社だという。

「上の人たちが、次はどんなことをしてくれるんだろう、と思わせてくれる。新しい業態を作るよ、と聞くたびに新鮮なんです。その期待をいつまでも持ち続けられるから、みんな続けているのかなと思います。」



4. 印象に残るお客様とのエピソード

「長く通ってくださるリピーターのお客様から、『ここに来るとホッとする』『また来たくなる』とお声をいただける瞬間は、何より嬉しく感じます。」

お客様との出会いや会話を通して、改めて学んだことがある、と二人は語る。

「料理だけではなく、時間や空間も提供している。一つひとつの出会いが、お店づくりの原動力になっています。」

印象深い出来事として挙がったのは、フランスから来られたお客様の言葉だった。本場の味を知る人から、この店のガレットを認めていただけた。その一言は、素材と焼き上げにこだわり続けてきた日々への、何よりの答えだった。

そして、「あなたに会いに来たよ」と言ってくださる方がいる。何年も通い続けてくださる常連のお客様だ。

「そういった繋がりがずっとあることに対して、感謝しかないなと思います。しんどいことも多いですが、その瞬間に、この仕事が好きだなと思うんです」と鈴木氏。


【神戸特集vol.10】元町「CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH」創業の地で、ともし続ける想い出の灯り。

ガレットとクレープを一度に愉しめるセットメニュー




5. これからやってみたいこと

「これからも、このトアウエストという街を、もっと盛り上げていきたいと思っています。」

目指すのは、ガレットとクレープを目的に多くの方が訪れ、人が集まり、街を歩くきっかけになる存在。食を通じて、この街の新しい魅力を発信し続けていきたい。それが、この街の一軒としての願いだ。

「この場所に明かりがともり続けること。街を歩く人が、このお店の話をしている。そんな姿を、もっともっと増やしたいんです。神戸の魅力をもっと知ってもらうために存在し続けるお店にしたいと、店長とも話しています。」

もうひとつ、二人が共通して口にしたのが、次の世代への継承だ。

「次の世代を育てないといけない、と思っています。適性のある子に向けたカリキュラムを整えて、面談を重ねながら一緒に育てていく取り組みを進めています。まずは成功事例をつくり、その精度を高めていきたい。属人的になっている部分を、仕組みとして残すことが目標です。」

鈴木氏も、同じ想いを重ねる。

「この会社に入ってよかった、この店で働いていることが誇らしい。そう思える瞬間が、私自身にたくさんありました。この会社から与えてもらったものを次に繋いでいくことに、意味があるのかなと思っています。」


【神戸特集vol.10】元町「CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH」創業の地で、ともし続ける想い出の灯り。

夏の訪れを感じる桃を使用したミルクレープとヨーグルトドリンク(※季節限定)




6. この街「神戸」への想い

「1986年、この場所でTOOTH TOOTHは誕生しました。時代に合わせて形を変えながらも、この場所で歩みを止めることなく、阪神・淡路大震災を乗り越え、神戸の復興とともに歩んできました。」

バーとして、フランス郷土料理の店として、カフェとして。この一軒は何度も姿を変えながら、およそ40年にわたって同じ場所に立ち続けてきた。

「私たちにとって神戸は、飲食業を志した原点であり、かけがえのない街です。」

出店の考え方にも、その姿勢は貫かれている。自分たちが出したいから出すのではなく、「この土地で何かできませんか」と声をかけていただき、その土地に合ったブランドを一からつくる。だからこそ、TOOTH TOOTHというブランドが神戸を離れることはない。

街への向き合い方も、どこまでも開かれている。TOOTH TOOTHで経験を積み、独立して自分の店を構える人は少なくない。近くに店を出したとしても、しがらみはない。会長や社長が、開店を祝う花を贈るのだという。

「街に灯りが増えていくことは、街が活性化するということ。辞めていかれた方にも頑張ってもらえたら、と思っています。」

そして、二人は最後にこう語ってくれた。

「創業者が大切にしてきた『神戸という街の元気に貢献できる』という想いを受け継ぎ、これからもスタッフとともにトアウエストの灯りをともし続け、神戸の皆さまと一緒に未来を歩んでいきたいと考えています。」

ガレットの焼き上がる香りが、今日も路地にふわりと流れている。1986年から変わらないこの場所で、いつまでも灯りはともり続けるのだろう。


【神戸特集vol.10】元町「CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH」創業の地で、ともし続ける想い出の灯り。


■店舗情報

店名:CREPE & GALETTE TOOTH TOOTH(クレープ&ガレット トゥーストゥース)

住所:兵庫県神戸市中央区北長狭通3-12-3 リーストラクチャー・トアウエスト1F

TEL:078-332-3131

【営業時間】
11:00-21:00(L.O.20:00)/不定休
※営業時間・定休日は変更となる場合があります。ご来店前に店舗へご確認ください。

席数:32席(テラス席あり)

ご予約:Web予約可

運営:株式会社ポトマック

公式サイトhttps://toothtooth.com/restaurant/crepe-galette-tooth-tooth

Instagramhttps://www.instagram.com/crepegalette_tooth/

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