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【神戸特集vol.3】元町『いずみカリー』が守り続ける味。「また頑張ろう」を支える、ちょうどいいおもてなし。

JR元町駅からほど近い「いずみカリー 神戸元町店」。20年の歴史を持つカレーブランド「いずみカリー」の一軒を、株式会社デニスホッパー 代表取締役の横山深紅さんが現在はオーナーとして引き継ぎ、運営している。看板メニューは、300gのボリューミーなハンバーグと濃厚チーズがかけられた「Wチーズメガバーグカリー 」、また24種類にのぼるトッピングも目を引く彩りだ。奥行きのあるカレーの味わいと、店を支えてきたベテランスタッフによる心地よい接客が地元客はもちろん、海外からのお客様までも惹きつけている。

法人営業からこの世界へ飛び込んだ横山さん。お店を始めたきっかけから、味と接客へのこだわり、そして「日本のいいものを海外へ」という構想まで、様々な話を伺った。


【神戸特集vol.3】元町『いずみカリー』が守り続ける味。「また頑張ろう」を支える、ちょうどいいおもてなし。

株式会社デニスホッパー 代表取締役/「いずみカリー 神戸元町店」オーナー 横山深紅さん



1. お店を始めたきっかけ

横山さんといずみカリーの出会いは、新卒で入社した会社での法人営業先から始まった。当時携わっていたのは、飲食店や小売店向けに電子決済(PayPay、d払い、au PAY など)やWi-Fiの導入を提案する営業。新規オープンの店舗へ飛び込みで伺った際、いずみカリーの創業者でもある代表と出会ったことが、きっかけだったという。

「もともとはお客様、つまり契約先だったんです」。決済やWi-Fiの契約を通じて縁が生まれた。

転機となったのはコロナ禍。営業部署がなくなる流れのなかで、引き継ぎの連絡を取り合ううち「次どうするの?」という話になった。独立は考えていたものの、「すごく美味しい料理が作れるわけでもないし、カフェをやるにしても、どうやればいいのか分からない。」という状態だったと振り返る。

そんなとき「この美味しいカレーと看板(ブランド)を使わせてもらって、商売の勉強ができるなら。」と心が動いた。

「最初から、めちゃくちゃカレーが好きだったというわけではないんです。でも、ここのカレーなら『これをやりたいな』と思えた。それが大きかったですね。」


【神戸特集vol.3】元町『いずみカリー』が守り続ける味。「また頑張ろう」を支える、ちょうどいいおもてなし。

元町のいずみカリーは、約7か月のあいだシャッターが閉まったままで、看板も残る居抜きの状態だった。JRの高架下で、店の中央に大きな柱があり、厨房も狭く動線も難しい。家賃も決して安くなく、なかなか次の借り手がつかない物件だったという。

そこへ代表から「自分(横山さん)がやってみたら?」と声がかかった。「ちゃんと自分の会社を動かして、経営を学びながらやっていきたい。」という思いもあり、店を引き継ぐ決断をした。

関わり始めて約5年、自ら店舗を経営するようになって4年ほど。じつは引き継ぐ前の約1年間も、デリバリー(Uber Eats など)のページ作りやメニュー設計、Googleの情報更新、Wi-Fiの設置といった広報・販促面を業務委託として担っていた。

「6つずつ見え方を分けようとか、トッピングが乗っているおすすめの食べ方をそのままデリバリーにも乗せてみたり、説明文を考えたり、そういうのは営業の時もしていました。」

その下地があったからこそ、店舗運営にもう一歩踏み込むことができた。



2.こだわっていること

奥行きのある味わい

カレーのレシピは大阪のセントラルキッチンが管理している。横山さん自身がレシピのすべてを把握しているわけではないが、生姜やスパイス、玉ねぎ、トマト、そして野菜の甘みといった素材が幾重にも重なっているのが特長だ。

「単に辛いだけじゃなくて奥行きがある。とよく言われます。最初に甘みを感じて、最後にスパイスが後を引いて辛くなる。何段階も味の表情が変わるんです。」

海外展開も見据えてレトルト化も検討したというが、「あの味そのまま」を再現するのは難しかった。やはりセントラルキッチンで仕込み、各店舗へ週1〜2回配送するのが一番おいしいという結論に現在は至っているそうだ。


【神戸特集vol.3】元町『いずみカリー』が守り続ける味。「また頑張ろう」を支える、ちょうどいいおもてなし。
看板はハンバーグ、選べる楽しさはカレーで

神戸元町店のトッピングは24種類。本店では約30種類を揃えるが、神戸は厨房が狭いぶん、よく出るハンバーグを中心としたカレーが主力となる。また本店では洋食のワンプレートも用意しているとのこと。

テレビ・雑誌・ラジオでよく紹介される看板商品は、ダブルチーズをのせた300gのハンバーグカリーだが、トッピングが豊富なので、カスタマイズは自在だ。


【神戸特集vol.3】元町『いずみカリー』が守り続ける味。「また頑張ろう」を支える、ちょうどいいおもてなし。
パティシエ仕込みの見た目へのこだわり

盛り付けや彩りへのこだわりは、本部オーナーのルーツに由来する。親の代からお菓子屋さんの家系で、ケーキのように真ん中を高く盛るのが基本。ご飯の上にナスやオクラ、エビなどを立てるように重ね、ぎゅっと押して中央を高くする。彩りも赤・黄・緑を意識し、野菜どっさりで、写真を撮ったときのボリューム感と一体感を生み出すようにしているとのこと。

「ちょうどカメラ付き携帯が出始めた頃はブログや口コミで『美味しいし見た目もきれい』と広まって、一気に拡大したと聞いています。」

写真を撮りたくなるビジュアルは、今もブランドの強みだ。「真ん中を高くする」などの基本は守りつつ、写真の撮り方やSNS・広告は自由なのだそう。だからこそ横山さんも、どう見せればお客様や売上につながるかを日々工夫している。


【神戸特集vol.3】元町『いずみカリー』が守り続ける味。「また頑張ろう」を支える、ちょうどいいおもてなし。

彩りと盛り付けが美しい「野菜どっさりカリー」



「ちょっと特別な一皿」という立ち位置

客単価はおよそ1,700円。三宮は安くて美味しい店も多い。毎日食べるには少し高いと横山さん自身もよく分かっている。だからこそ目指すのは、ちょっと特別な一皿。

「勉強を頑張ったとか、これから頑張らなきゃ、という人が食べに来てくれるイメージなんです。量も質も絶対に落とさず『これを食べて気合を入れていこう』と思ってもらえたら。」



3. スタッフとの関係で大切にしていること

現在のスタッフは6名ほど。10年前から関わっているスタッフも在籍しており、店の動かし方は熟知してくれている。その中で60〜70代のスタッフも活躍しているとのこと。

「私の母より年上の方もいますが、本当にお元気なんです。厨房に入ってくださって、ありがたいですね。」

横山さんが目指すのは、カフェのような居心地のよさ。

「営業の仕事をしていた時、ランチはいつも外食でした。カレー屋さんといえば男性ばかりで、席も近くて入りにくいなと感じていて、結局一度も行ったことはなかったんです。その経験から、うちは女性お1人でも大歓迎ですし、皆様にゆっくりしてもらいたいと思ってるんです。」

その雰囲気を支えているのが、ベテランスタッフの絶妙な接客だ。お客様と会話する、そっとしておく、荷物を運ぶ、予算を気にしているお客様にさりげなく配慮する。といった細やかな気遣いができる。一人で静かに食べたい人には話しかけず、そうでない人には自然に声をかける。人によって距離感を読み分けてくれるのだという。

「気を遣っていないけど、気を遣う。ちょうどいいさじ加減なんです。それを皆さん本当にうまくやってくれて、ありがたいですね。」

横山さんが何より大事にしているのは接客(ホスピタリティ)だ。

「味が美味しいのはもちろんですが、そのうえで『気持ち良かった』『また来たい』と思ってもらえる居心地のよさを一番重視しています。」

そして、長く働くスタッフがいることの価値も、こう語る。

「長く勤めてくれる方がいてくれるのは、本当にありがたい。新しく入る人も、その人たちの動き方を自然と受け継いでいくんです。長く働いてくれる方にとって働きやすい環境は、新しい人にとってもいい環境だと思います。」


【神戸特集vol.3】元町『いずみカリー』が守り続ける味。「また頑張ろう」を支える、ちょうどいいおもてなし。

4. 印象に残るお客様とのエピソード

最近増えてきているのが韓国からのお客様だという。

「『旅行ですか?』と尋ねたところ『6回目です』と。」
「口コミを見て『ここに来たかったから日本に来ました』という方もいたり、紹介で来てくれる人も多くて、うれしいんです。」

忘れられないのは、お店を引き継ぐ前、約7か月間シャッターが閉まっていた頃のこと。以前からの常連さんが「お店なくなっちゃったの?」と心配して、何度も電話をくれていた。再オープンを知って、また足を運んでくれたという。

いずみカリーが多店舗展開していた頃からのファンとの再会も、心に残る出来事だったという。

「『店長に会ったことあるよ』『前から何回も行ってた』という方が、たまたま元町の店を見つけて入ってきてくれる。」
「覚えていてくれて、もう一度思い出して来てくれる。」

セントラルキッチンがあるからこそ、オーナーや時代が変わっても味が変わらないことがこうした再会を支える強みになっている。「飲食店は人が変わると味も変わりがちですが、そこはブランドの強みですね。」

そしてもう一つ、横山さんの胸に残っているのは、精神的にしんどくて外食も人に会うのも難しい、というお客様の言葉だった。

「『ここのカレーなら来られる』『これを食べて、また頑張れる』と言ってくださって。」

「美味しいから、いろんな人に食べてもらいたい。」
「やっぱりそれが、本当にうれしいです。」



5. これからやってみたいこと

まずはこの店を残すこと、あとは売上も伸ばしたい。そして、お店の力で若い人や、辛い思いをしてきた人を後押しできる発信もしていきたいとのこと。

その先に横山さんが描くのは「日本のいいものを海外へ」という構想だ。過去の留学経験から、海外で会う人に「日本から来た」と言うだけで喜ばれ、外から見て初めて日本の良さに気づいたという。食文化や伝統文化を体験したくて来日する人が増えている今、追い風だと感じている。

「着物をリメイクした商品や、歴史上の人物から着想した香水とか。日本の文化を海外に発信していきたいんです。」

さらに構想は具体的だ。畳職人や伝統工芸の作り手には後継者が少なく「あと20年でいなくなるかもしれない。」と危機感を抱く。そんな方たちに声をかけ、海外のバイヤーが1か所で20ブランドほどを見て、買って帰れるような場をつくりたい。英語でのやり取りやサイトづくりを代行し、海外展開を手伝う構想だという。

「日本のいいものを海外の人に知ってもらいたい。その手伝いができる形で関われたら、と思っています。」

もう一つ、まだ構想段階だと前置きしつつ語ってくれたのが、教育への思いだ。大学で教育を学び、留学についても「海外の教育を見たい」という動機からだった。海外と日本の教育を融合した柔軟で人にやさしい学びの場をつくれないか、と考えている。

「海外では、赤ちゃんを抱っこしたお母さんが授業を受けていたり、軽食をとりながら学んでいたり。」
「疲れていたら少し休めばいい。」「ルールで縛るんじゃなく、柔軟に。」
「何歳からでも学んでいいと思うんです。」

「まだ全然まとまってないんですけど」と笑う横山さん。だが、その根っこにあるのは、日本のいいものや人を、次の世代へつないでいきたいという一貫した思いだ。



【神戸特集vol.3】元町『いずみカリー』が守り続ける味。「また頑張ろう」を支える、ちょうどいいおもてなし。

6. この街「神戸」への想い

横山さんはもともと神戸に深く根ざしていたわけではなく、いずみカリー本部からの声かけという縁で、この元町の物件を引き継いだ。いわば、ご縁で始まった元町でのお店だ。

それでも、海外からのお客様が自然と集まるこのお店のあり方は、港町・神戸の国際的な空気とどこか響き合う。「日本のいいものを世界へ」という横山さんの構想と、この街の開かれた雰囲気は、相性がいいようにも見えた。

個性的な名店が並ぶ元町。そのなかで横山さんが大切にしているのは、誰もが入りやすく、ゆっくりできるカフェのような居心地だ。勉強や仕事を頑張った日のごほうびに、これから踏ん張る日の景気づけに。量も質も落とさない一皿が、この街で誰かの「また頑張ろう」を、そっと後押しする。

法人営業から飲食の世界へ、そして「日本のいいものを海外へ」。さまざまな思いを抱えながら、横山さんは今日も元町で、奥行きのあるカレーと、ちょうどいいおもてなしを届けている。



店名:いずみカリー 神戸元町店

住所:兵庫県神戸市中央区北長狭通3-30-76

【営業時間】
月・火・水・木・金
11:00 – 15:00 L.O. 料理14:30 ドリンク14:45
17:00 – 21:00 L.O. 料理20:30 ドリンク20:45
土・日・祝日
11:00 – 21:00 L.O. 料理20:30 ドリンク20:45

予算:昼¥1,000~¥1,999/夜¥1,000~¥1,999

席数:9席(カウンター9席)

https://tabelog.com/hyogo/A2801/A280101/28047150/

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