神戸・元町の住宅街に佇む焼鳥店「一角」。オープンから2年が過ぎ、現在は1日70名超のゲストを迎える人気店となっている。14坪26席という規模ながら、常連様はもちろん、地域柄として近くに住む経営者の方にも応援されるお店だ。今回はオーナーでもある、E.Thompson株式会社の代表取締役社長、中山輝彦氏にお店の魅力と神戸への想いを伺った。

E.Thompson株式会社 代表取締役社長/「焼鳥 一角」オーナー 中山輝彦氏
1. お店を始めたきっかけ
16歳から飲食人として食には縁のある中山氏。以前は建築関係の会社で店舗立ち上げ専門の部署に所属し、北野坂や東門街にて、7店舗ほどを手掛けられたとのこと。そうした経験から、独立後は自身の店舗を持つことに。稀にしか出てこない好立地のテナントを紹介してもらったこともきっかけだったそうだ。
「正直、神戸への特別なこだわりはなかったんですよ。」
「仕事を辞めてから、大阪から明石まで200件くらい物件を見て回りました。」
「見れば見るほどわからなくなってくるんですけど(笑)。」
「最後に『この場所、この条件ならやれる』と思えたのがここでした。」
焼鳥店に絞ったのも、前職で3店舗の焼鳥店立ち上げを経験していたことから。スケルトンからの工事で一度施工に失敗し、2024年9月にオープンするも、11月にもう一度作り直したという苦労のスタートだった。
2. こだわりについて
「一角」の“つくね”は、世に多い「小さくてカリッと」とは逆を行く、「大きくて柔らかい」作りだ。中でもおすすめは、塩つくね。
「他と同じ形でもよかったんですけど、あえて逆張りで。」
「うちの串は大きいですよ。5本食べたらお腹いっぱいになるくらい。」
「あとジューシーで柔らかいのも特徴です。」
つくねの他、焼鳥も一つ一つの肉が大きく味もしっかりしており、野菜串も人気の品が揃う。

丁寧に焼き上げられた大きな「塩つくね」

こだわりの器に盛りつけられる「土鍋ごはん」
そして料理以外では「器」や「内装」にもこだわりが見られた。滋賀県の信楽まで自ら足を運び、職人と直接やり取りしながら買い揃えた器は、統一感があり美しい。木製のテーブルも素材を自ら交渉して仕入れ、選定した職人に加工してもらうなど、生産者との繋がりをとても大切にしている。また入口の重厚な扉は昔の蔵の扉をそのまま転用しているとのこと。ケヤキの一枚板や、自分で手入れする包丁、写真映えを考えたライティング設計も含め、こだわりは細部にまで詰まっている。
3. スタッフとの関係で大切にしていること
現在は数名の社員と10名ほどのアルバイトが在籍。1日70名超のゲストに対し丁寧に料理を提供していくため、余裕を持って人を配置している。
「雇用形態や立場に関係なく、役割に見合った給料やちょっとしたボーナスなんかもお支払いしています。」
「仕事に対する評価と対価をきちんとすることで、仕事に対する前向きな会話もできるし、お互いの関係も全然違ってくると思っています。」
スタッフの特徴としては、優しい子が揃っているという。お父さんが常連として通ってくれたり、家でアルバイトが禁止されている子もここならOKと言われるほど。家族ぐるみで「一角」を愛してくれる関係性が生まれている。
「就職や社会に出るときのスタートラインとして、うちで働いていた経験は絶対に活きると思っています。」
「気さくなお客さんが多いから、表情や所作を自然と汲み取れる人間になれる。それは飲食に限らずどんな仕事でも武器になりますから。」
余談だが、アルバイトの男の子が包丁で指先を少し切り、自分の血を見て失神してしまったアクシデントもあったとか。営業中の出来事で大慌てだったが、今では笑い話になっている。
4. 印象に残るお客様とのエピソード
このエリアは県庁が近いこともあり、税理士や社労士の方、経営者の方が立ち寄る街でもある。そんな方々の集まりから10人単位での団体予約が入ることも珍しくない。
「社会的な立場を持たれている方って意外と優しいんですよね。」
「みんな自分たちも同じような道を辿ってきているから、若い経営者に対しても親みたいに可愛がってくれる。」「うちを見てくれている税理士や社労士の方も、もともとお客様だった人にお願いしているくらいです。」
また横の繋がりも深く、周辺の飲食店オーナー同士が互いの店を行き来し、「一角」のキッチンを使って仲間同士で料理を競うこともあるそう。
「2年やっていると、そういう人と人をつなぐ場所にもなってきたんだなと感じてます。」
いまでは料理人同士のネットワークがどんどん広がってきているようだ。

一日五食限定の「名物丹波地鶏 もも肉タタキ」
5. これからやってみたいこと
今後の展開も聞いてみた。
「次もまた焼鳥屋とは限らないですよ。場所を見てから業態を決めたい。」
「焼鳥でもいいし、クレープ屋でもいい。」
「前職でいろいろやってきたから引き出しは多いんです。」
立地で業態を決めるマーケティング思考は前職譲り。器への愛が高じて、「飲食店向けの食器屋」といった構想も大変興味深かった。
また気になっていた社名「E・Thompson株式会社」は、エマ・ワトソンの名前を間違ったことが始まりという少し変わった由来を持っている。
「うちの会社の理念は『街づくり、人づくり。街の価値を高め、人を育て、食という文化を通じて社会の礎となる』なんです。」
「元町のこのエリアはコロナの影響から、お店の継続が難しい時期もあったみたいです。」
「うちが長く続くことで、街づくりの一端を担えると嬉しいですね。」
思考と行動力のスピードが早く、何をしても成功するように感じてしまうのも中山氏の魅力なのだろう。
6. この街「神戸」への想い
きっかけは「たまたま」だったという神戸の街。だが2年ほど商売をする中で、この街への愛着は確実に育っている。
「神戸でやってよかったなって本当に思いますね。」
「いろんな方と接する中で繋がりが自然にできていく街なんです。」
「お客様が次のお客様を連れてきてくれたり、税理士さんや社労士さんがそのままお客様になってくれたり。情報も人脈も、この街では自然に流れていくんですよね。」
前職の時に神戸で仕事をしていた経験から、街の感覚はすでに掴んでいた。
「飲食店をやっている同世代のオーナーが、最近は増えていて、横の繋がりがどんどん広がっているんです。漁師さんから料理人まで、神戸って意外と顔が広い街なんですよ。」
「これからもここで続けていきますし、近くにいい物件があればもう一店舗、というのも自然な流れなのかなと。」
「神戸の食文化、街の価値を、自分たちなりに少しずつ高めていけたらと思っています。」
店名:焼鳥 一角
住所:兵庫県神戸市中央区下山手通3-3-9
【営業時間】
月・火・木・金・土・日・祝日・祝前日・祝後日/17:00-00:00
水/定休日
予算:夜¥4,000~¥4,999
席数:26席(カウンター8席/テーブル席18席)













