独自の取り組みや経営手法で、これまでになかった飲食のカタチを生みだし続ける経営者たち。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で多大な影響を受ける中でも売上を維持し続けている理由はどこにあるのか。
第二回は、これまでにない手法で短期間のうちに人気店舗を展開する、株式会社総合近江牛商社(近江焼肉ホルモンすだく)西野立寛取締役兼CEOに話を伺った。
株式会社総合近江牛商 西野立寛取締役兼CEO
(株)船井総合研究所に入社し、個人店から上場企業まで外食企業のコンサルティングに従事。飲食店での勤務経験はなかったものの、コンサルティング経験を活かして2019年に起業。やがて学生時代の仲間が集まり、近江牛を主力とした焼肉店を出店。20坪前後の物件にて1坪あたりの売上が30万円を超える効率の良い店舗を出店。現在直営6店舗、フランチャイズ2店舗を展開、飲食業界未経験の異業種ばかりのスタッフが、これまでにない発想で滋賀を中心に事業を展開している。
異業種からの新しい発想から生まれた店舗
僕たちは異業種からの転職者ばかり。僕はコンサルティング会社出身ですが、他のスタッフも医療系や銀行、保育園、専門商社など飲食業界の経験者は誰もいませんでした。飲食業界のスタンダードな形を知らないからこそ、それまでにない新しい発想が出てきたんだと思います。
まず、店舗には“料理人”がいないのが大きな特徴です。営業中は、包丁もまな板もなく、食材はすべて工場で仕込んでカットされたものを運んできます。袋から出して盛り付けるだけだから難しい技術は不要。効率よく料理が出せるしクリーンな工場で作るから安心で安全な食品を提供できるんです。またFLR比率を抑えたコスト設計で、損益分岐点が低いため1店舗あたりの営業利益率は、20%~30%となっています。また食材原価をしっかりとかけることで集客も安定し、売上をしっかりキープしています。
各店舗の数値は、すべてシステムで管理しています。また、AIによる来客予測を行うことで可能とする仕込み予測をはじめ効率的な店舗運営が行われています。
もともと観光客ではなくお客様のほとんどが地元の方だったから、4月、5月はコロナの影響もあって6割か7割ほどになりましたが、6月の売上は昨年を超えていました。また通信販売で精肉・加工品のギフト商品の事業もあり、そちらは昨対比2倍から3倍ほどに伸びました。焼肉屋は店内の換気がいいという印象も後押しになっているとは思います。また、店舗のクリンネスに関しては、普段以上に徹底しています。さらに給付金が出るタイミングで集客促進フェアを実施。結果として全社的にはコロナの影響はほぼありませんでした。
店長が毎日変わる?!店のファンを作る仕組みとは
一店舗につき一人の社員が店長として在籍していますが、店長は店に固定ではなく、毎日別の店舗に行く日替わり制なんです。これはお客様に、人ではなくお店・商品のファンになっていただくための仕組みですが、もう一つ意味があります。それは、どの店舗も同じ場所に同じ物を置いておく、定物・定位置管理を徹底させること。片付けも毎日同じ場所に、発注もその日のうちに済ませ、明日どの店長が来てもすぐに同じ対応ができるようにしておくんです。毎日同じ店舗に出勤していると「明日やればいい」と思ってしまうことも、明日は別の店舗に行くから、その日のうちに業務を完結させる意識が高まっています。
もともと僕たちは異業種の集まりですが、他の企業で当たり前にやっていることをやっているだけという認識。ただその業界が飲食だったということです。
将来的には5年で10億円、10年で100億円という中期計画を立てています。近江牛にこだわりつつ、マルチブランドマルチロケーションにて出店を行い“すだくブランド”で展開していこうと思っています。
株式会社総合近江牛商社HP:https://omigyucorp.co.jp/