JR元町駅から東。旧居留地の入口にあたる、穴門商店街のニューもとビルに「TOKI」と「SWALLOW TOKI」がある。三宮に回れば、餃子とクラフトジンの「TOKI PAO」、そしてもつ焼き「トキシラズ」。運営するのは2019年5月設立の合同会社TABEARUKI、代表の石原優樹氏である。大学時代は飲食でのアルバイトに励み、社会人としては神戸、東京の企業でサラリーマンとして様々な事業に尽力した。30代前半で神戸に戻り独立。掲げるミッションは「食べるひと時 その価値を最大化する」。そして料理の物差しは「特別なふつう味」である。自らを「料理人ではない」と言い切る経営者が、なぜ"時間の価値"で勝負することを選んだのか。ワイン、ジン、農業、そして餃子へと広がる商品開発の考え方と、この街への想いを伺った。

合同会社TABEARUKI 代表 石原優樹氏
1. お店を始めたきっかけ
石原氏の飲食のキャリアは、大学生時代のアルバイトから始まる。京料理の店とホテルの厨房で、4年。在学時に調理師免許を取得。ただし、その延長線上に独立があったわけではない。
「飲食業自体は、大学生のときのアルバイトで4年です。その後は7年間、企業で働いていました。」
勤めたのは、神戸に本社を置く企業。ネット通販の会社でもあり、物流、仕入れと発注、バイヤーのような仕事、そして商品企画。多様な仕事を経験した。
「物作りとかマーケティングの基礎は、すごく学びました。デザインとか、かわいいものとか、そういう感覚もめちゃめちゃ勉強になりましたね。」
7年目に、転職を決める。ある経営書籍で特集されていた社長に憧れ、東京の飲食企業に入社した。目的はひとつ、経営を学ぶことである。
「料理がうまいからお店が成功するわけではないと思ってたんです。」
料理の基礎を教えていただいたアルバイト先の京料理のお店も、ホテルもその後、何年かたったら閉店してしまい、むしろ現場で大事なのは、飲食店経営の原則原理を知っているかどうかだと思うんですよね。財務の知識だったり、物件の選定、取得、教育・評価の制度、もちろん料理やメニュー構成もです。要するに業績の良い時も悪い時も全体のバランスをとる感覚、修正できる力があるかどうかです。
飛び込んだ先は、勢いの塊のような飲食企業だった。
「社長が本当にカリスマで。32、33歳ぐらいで10年で150店舗とか展開する人だったんで。ミシュランもあるし、居酒屋業態も、寿司も、パン屋さんも、アイスクリーム屋さんも全部持っているような会社です。」
そこでは成功している経営者たちの姿も、責任者として赤字店舗で店を閉じる苦しい瞬間もすべて経験されてもらえた。
業態開発の現場を見ながら、店長も経験した。そのうちの一軒が、3,000円で飲み放題プランがある酒場だった。ここで石原氏は、後の設計図につながる違和感と出会う。
「非常にリーズナブルなお店で。サラリーマンのお客さんがメインでしたが、会社や人の文句を言いながらずっと飲み続けている(笑)なんかコレ違うな、と感じていて。これは食の本質ではないな、と思っていました。」
では、本質はどこにあるのか。答えは、自分の手札を数えるところから出てきた。
「やっぱり、お店は人が時間を忘れるくらい喜んで過ごすことのほうが、まず大事だよなと。ただ、僕はすごい腕のある料理人というわけではないので、じゃあどこで勝負するかといったときに、時間価値を大切にしたいお店、ということで『TOKI』なんです。」

ビルの2階に構える「TOKI」

1階は「SWALLOW TOKI」として営業
東京で過ごした時代の最後、3ヶ月だけ、石原氏はアルバイトも経験した。本当にすごいもつ焼き屋だった、という一軒である。ここでの経験が数年後に効いてくる。
2019年5月、合同会社TABEARUKIを設立。社名は、そのまま思想でもある。
「自分が世界中の美味しいものを、死ぬまでいろいろ食べていきたいなというところがあって。もともと食べ歩きが好きだったんです。自分たちの事業で稼いで、それをもとにスタッフといろんなところに食べに行って、得た知見をまたみんなでお店に持ってきたいなということで、TABEARUKIにしました。」
同年11月25日、元町通1丁目に2軒が同時開店する。2階が大衆居酒屋「TOKI」、1階が立ち飲みイタリアン「スタンドトキ」。社員は3人だけだった。石原氏、妻、そしてイタリアンのシェフ。シェフは神戸で働いていた時代の知り合いで、戻ってきてから声をかけた人物だという。
「一緒に住むぐらいなんでね。」と笑う。実際、このビルは1棟丸ごと借りていて、上階は住居だった。シェフと石原氏と妻の3人で、3年ほどそこに暮らしながら店を営んだ。
「通勤時間ゼロというのと、家賃がみんなゼロなんで。できる限り初期投資を抑えて、店舗兼会社兼住居で全部完結できる、という考え方でした。」
物件選びには、明確な基準があった。
「神戸の場合はやっぱり、店前通行量がすごい大事だなと思っていたので。あとは、神戸で働いていた会社もすごい近かったんです。お店を開くときに、最初に誰に喜んでもらいたいかなと思ったときに、やっぱりお世話になった人たちに来てほしいなと思ったし。土地勘もあったので。」

三宮の中心地ということもあり昼夜問わず賑わいをみせる
2.こだわっていること
店舗展開の考え方も、この「土地勘」から一歩も出ない。三宮・元町エリアに集めるドミナントである。
「単純に、自分の目の届く範囲がいいなと思っていたんですよ。それに修正が素早く対応できる。別に大阪とかに行くわけでもなく、土地勘がやっぱりある部分のほうが、強みがあるかなと思って。」
近いから相互送客ができる。しかも4軒とも業態が違う。大衆居酒屋、フュージョンとナチュラルワイン、餃子とクラフトジン、もつ焼き。お客様が、系列のなかを回遊して楽しめる設計だ。
2軒目の「TOKI PAO」は、コロナ禍のなかで生まれている。TOKIの開店から1、2ヶ月ほどで、世の中が止まった。
「ただ、こういうときはゲームチェンジが起こるので、物件はでるだろうなと思っていました。」
そして、餃子という業態が選ばれた理由は、意外なほど理屈が通っている。出発点は、コロナ過に通販で売った唐揚げの失敗だった。
「TOKIの唐揚げは非常に大きくてボリューミーで、低温と高温の油で二度揚げするんです。それを売りにしていたんですけど、通販でお届けしたときに、大きすぎてご家庭だと、上手に揚がらないということがあったんですね。温度とか測らず適当に揚げてしまうし。結局は自分流にやっちゃうから、実はお店の味を家庭で再現、は難しい商品なんだと。」
では、通販でできるものは何なのか。
「冷凍餃子が一番売れそうだなというイメージがあって。店舗でも売れて、テイクアウトもできるし、通販もできる。スーパーの冷凍ケースを見ていて、この業態に参入しようと思ったんです。」
つまり「神戸だから餃子」ではない。販路がいちばん広い業態として、餃子が選ばれた。

洗練されたデザインが元町にとけこむ「TOKI PAO」

名物の餃子はジントニックと合わせて楽しむのがおすすめ(TOKI PAO)
3軒目のもつ焼き「トキシラズ」は、自身の感動体験から生まれた業態である。東京で初めてもつ焼き文化に触れたときのことを、石原氏はよく覚えている。
「もつ焼き文化を知らなくて。焼き鳥のように豚のモツを、タンとか、ハラミとかっていうのもあって。すごく美味しくて、感動したんですよ。」
庶民的なメニューで、当時そんなにお金もなかったからよく利用した。しかも、神戸にはまったくなかった業態である。神戸でもつ焼きを掲げる店は、いまも数えるほどしかない。
「神戸に戻る前に、東京の本当にすごいもつ焼き屋さんで、最後の3ヶ月間だけバイトさせていただいて。絶対これをいつか持ってこようと思っていました。」

隠れ家のような雰囲気が心地よい「トキシラズ」

名物もつ焼きは石原氏の思い出から生まれた一品(トキシラズ)
一方で、TOKIのランチが洋食になった経緯は、感動でも計算でもなく、観察の結果だった。もともとランチはアジアン・エスニックを出していた。最初は勢いも良かったが、途中で失速する。
どうしようかと考えていたとき、1階のイタリアンで仕込んだ肉が余った。数量限定でよければ、とランチに出してみたところ、反応がまるで違った。
商圏を見渡してみれば、このエリアには洋食の名店がいくつもある。答えは、そこにあった。
「言語化すると、居留地エリアを歩いている人たちに、プチリッチなランチタイムを。というのがテーマなんです。何か目的があるわけではないけれど、この辺りは百貨店もあり、ゆったりとした時間を過ごす人が、平日休日にかかわらず多い。その人たちはきっと、お昼はちょっとだけいいものを食べたい。というニーズがあるから、洋食業態が今もなお、根付いているんだろうなと。」
さらに、オペレーション上の裏づけもあった。元々フライヤーが2つある。だから定量的に、ムラなく再現できる。
「それがうまくはまってくれて、今でもたくさんの方に来ていただけています。」
「お客さんが欲しいものに常に目を向けることが、やっぱり大事だなと思っていて。最初のアジアンエスニックは、自分たちのランチでやりたいことが、一部の知り合いに評価していただいたことから、勘違いしてしまって、TOKIに求められるニーズではなかったと。
料理の世界って、本当によく忘れるんですよ。これまでの経験値や自分のやりたい事が先行しすぎてしまう。中にはそれでしっかり成り立っているお店もあるけど、リスキーだなと思う。だからこそ実際ここで何が求められているのかというのは、常に仮説をたてて商品を作ります。」

人気のランチでは自慢の唐揚げも味わえる(TOKI)
そのうえで、メインメニューは創業当時から変わらない。唐揚げである。
「居酒屋なんで。居酒屋の定番はハイボールと唐揚げだと思っています。あったら注文するので、付加価値がつきやすいからという理由です。フライヤーで美味しく揚げる唐揚げがあったらいいなと。」
この考え方を「特別なふつう味」という言葉にしている。
「僕らが大事にしているのは、特別な”ふつう”という料理のバリューなんです。ふつう味というのは、唐揚げとかパスタとか餃子とか、誰もがいつでも食べたくなるもの。それを特別にしたいよね、ということなので。頭の中である程度、想像できる味が、期待値以上だったときにお客様の料理への感動値が広がると思います。」

ワインとイタリアンを楽しみたい日には「SWALLOW TOKI」がある
そしてもう一つ、「商品価値」という言葉で語ったのが、オリジナル商品への考えだ。きっかけは、やはりコロナ禍のニュースだった。
「ワイン用ブドウが余っているというのを、当時のニュースで聞いたんです。ブドウ農家さんって、ワインの醸造所に当たり前に卸していたんですけど、コロナになった瞬間にワインが売れなくなっちゃったから、ブドウがめっちゃ余ってしまって。それ、めっちゃもったいないなと。」
正直なところ、当時はワインをほとんど知らなかったと語る。
「知らなきゃなとは思っていて。自分なりに、ワインに劣等感みたいなものもあったのかな。でも企画は得意だったので、作りながら学ぼうと思いました。」
現場の問題意識も、同じ方向を指していた。
「ほかのお店と同じワインだと、お客さんもこれぐらいの価格のものだなとすぐ分かる。スマホで調べれば、仕入れ値も分かってしまうので、何のオリジナリティもないなと思ったんです。
だから店舗のオリジナルの部分を作って、ストーリーと想いを伝えられれば、お客さん感動してもらえるだろうと。」
こうして2022年、「みんなで造るワイン」が始まる。山形県南陽市のブドウ農家の畑まで自分たちで足を運び、奈良の木谷ワインで醸造する。ソムリエも巻き込んだプロジェクトで、先に売上を保証することで造り手側の負担を軽くする、という仕組みを組み込んだ。翌2023年には農家が増え、醸造本数は倍になった。エチケットには、畑で見つかった野ウサギが3羽描かれている。
「完全オリジナルです。自分たちで山形まで収穫に行ったりして。その過程も学びながら。」

山形のブドウから造るオリジナルワイン
ジンも同じ発想でつくった。世界のコンテストで優勝経験のある蒸溜家に依頼し、ボタニカルは自分たちで探す。無農薬で栽培してもらったものを使っている。
「ボタニカルは自分たちで見つけていって。結構、地道な活動をしています。新しい商品価値をつくらないといけないなと思って。じゃないと個性もないので。何でもやっぱり、知るのが大事だと思うんですよ。」
3. スタッフとの関係で大切にしていること
創業時は3人だった会社に、いまは店長、マネージャー、商品企画といった役割がある。任せ方についての答えは、まっすぐだった。
「最初こそ、全部自分でやっていかないと、と思ってたんですけど。規模が大きくなると、任せるしかないですね。任せていこうということはやっていったし、その人の性格や個性はなるべく見るようにして。強みを生かせるようにしています。」
そのうえで、「常に大事にしている」と言い切ったのは、共有することだった。
「自分が目で見て気づいたことや、本を読んでよかったことは共有して、なぜそれがいいのかというのは常に伝えています。」
そして、日報である。全員の日報に、石原氏が全部コメントを返す。
「限られた時間の中でなかなか大変なんですよ(笑)。スタッフも疲れた中で書くのは手間だと思うし、正直かなり面倒くさいと思っている子もいるはず。でも、振り返りから、意見や考えを持たなければ、人も会社も成長しない。もし、ここのお店を辞めたとしても、振り返れる習慣は豊かな人生を送るためにも大事だと思うんですよね。」
だから、書いてくれた分は必ず返す。
「ちょっとした事に気づけるか。昨日よりも少しでも自信を持てる自分になっているか。そういう人になってほしいなと思っていて。それは大事にしています。」
もちろん、文章が苦手な人もいる。直接喋って口で報告することが得意なスタッフもいる。
「なるべく、振り返りができる人になってほしいなと思っています。」
店舗が近いことのメリットは、ここにも返ってくる。
「だから三宮がいいなと。コミュニケーションが取れるので。」
また、農業の取り組みも、もともとはスタッフのための企画だった。コロナ禍のころ、神戸市西区で頑張る若手農家の特集を目にしたのがきっかけである。元プロ野球選手から就農した人物で、これから事業を広げていきたいという段階だった。
「面白そうやなと思って。僕も実家が農業をやっているんですけど、スタッフは現場で働く形で、作物を育てるという体験をしたことがなかったんです。ジャガイモがスーパーに売っているみたいな感覚だったので。一緒にちょっと収穫をして、体験する、見るということをさせたかった取り組みの一つでした。」
4. 印象に残るお客様とのエピソード
客層について聞くと、数字がひとつ返ってきた。1階も2階も、女性が8割。
「全員女性になる場合もあるんですよ。逆に珍しいですよね。こんなことになると思っていなかったんですけど。本当に女性が多く集まる店なんですよね。」
そして、それを戦略として受け止める。
「結果的にはいいなと思って。女性だと発信力があるんです。男性は美味しい店があっても周りの10人ぐらいにしか言えないんですけど。僕らの10人よりも、フォロワーを600人持っている彼女たちが『美味しかったです』と発信することは、圧倒的に拡散力がある。そういった意味だと、ここが女性に支持されるのは嬉しいです。」
人が人を呼ぶ。飲食店にとって、いちばん嬉しい広がり方である。一方で、もつ焼きの「トキシラズ」は男性客が多い。業態が変われば、集まる人も変わる。
また印象に残る出来事として二つあった。「TOKI」でのエピソードだ。
一つは、スタッフとの話でもある。店で働いていたスタッフが、結婚式の二次会をこの店でやってくれたのだという。
「初めてやったんですよ。ウェディングの2次会をここでみんなでやって、盛り上がって。お店してよかったなと思いますね。」
卒業生がよく来てくれる、というのも石原氏の喜びだ。結婚して、子どもが生まれて、みんなで集まる。毎年正月には、卒業生たちだけで集まって食事をしているらしい。
「僕は実家に帰省しなければならないので、参加してないですけど」と笑う。
「純粋に嬉しいですね。成長が見られるっていうのが」
もう一つは、「TOKI PAO」での出来事だという。初めて来店してから何度も通ってくださっていたお客様が、あるとき「前撮りの写真を撮らせてほしい」と申し出た。
「すごく気持ちが良いお店で、と言ってくださって。GINや餃子とともに撮影されて、結婚式で流してもらったりとか。」
「もう何だろう。それ、すごい嬉しいですね。」
人生の一場面に、自分の店が写り込む。「食べるひと時 その価値を最大化する」というミッションが、いちばん具体的な形で返ってきた瞬間かもしれない。

大衆居酒屋でありつつ女性にも人気のある「TOKI」
5. これからやってみたいこと
直近でやるべきことは、はっきりしている。
「まだ、トキシラズができたてなので。店としては、まずそこをしっかりと成長させて、神戸に根づかせることが、直近のやらなければならないことですね。」
そのうえで、次の展開を読んでいる。
「来年以降は、食品の税率が変わるじゃないですか。多分、またこれがゲームチェンジのタイミングなんだろうと思っていて。きっと外食離れになるだろうなと。お客様が家で作る方の楽しみを、メディアが謳ってくるなと思ったので。」
だから、種をまいておく。それが「暇つぶし餃子」である。皮と餡をセットにしたパックで、買った人が自分で包んで焼く。9月から、阪神百貨店の催事で販売して売れ行きを見るという。
この商品にたどり着くまでに、相当な量のお取り寄せ餃子を食べた。
「いろいろ研究したんですけど。あんまり差がないなと思ったんですよ。大きさとかが変わってくるくらいで。味どうこうじゃないな、ということに気づいて。」
では、餃子の価値はどこにあるのか。
「実は、包む時間じゃないのかなと思って。家族で包むとか、遊びながらやるとか。自分たちで焼いて食べる楽しみが大事だと思って。誰とどう食べるか、そっちが大事なんです。それができるのは餃子だなと思って。」
唐揚げでは、これができない。餃子だからできる。
そして、時代の側から話を組み立て直した。
「今、便利になりすぎなんですよ。全てが便利で、アプリで頼んだら出来たてが届くし、冷凍食品もコンビニもうまい。でも、それがとびきりいいかといったら、僕はそうじゃないと思うんですよ。便利な時代だからこそ、ちょっと不便とか、手間を加えることが食の価値だと思うんで。」
「そんな中でも、材料を細かく切ったりとか、計量したりということは手間だと思って。そこは省いてあげて、おうちでお店の味を自分たちで作ったり、アレンジできたら一番いいなと。」
店名の意味が、ここで出てくる。
「TOKIって、食の時間の価値の最大化だから。それは別にお店じゃなくてもいいなと思って。おうちで手作りする時間、やっぱり大事だよなと。」

料理の楽しさを改めて気づかせてくれる「暇つぶし餃子」
6. この街(神戸)への想いを聞かせてください
鳥取で育ち、大阪、京都、東京にも住んだ。そのうえで神戸をどう見ているか、という問いに、まず生活者としての実感を答えた。
「本当に、今もそうなんですけど、住みやすいなと思うんですよね。住んでて。」
そして、比較対象として一つの街の名前が出た。スペインのサン・セバスチャンである。
「美食の街にも地形がすごく似ているんですよ。近い距離に海があって、山があってっていうので。サン・セバスチャンはミシュランが当時から世界で一番多い街みたいな、食いしん坊が食べ歩きを楽しめる街なんですよね。」
「街と食という意味では、すごくちょうどいいんですけど、やっぱりなんか、ちょっと寂しいところがあるなと思いますよね。他と比べてみると。その物足りなさっていうのが、まだ余白としてあるんだろうなというのはありますね。」
余白を埋めるものは何か。挙げたのは「熱の起こし方」だった。この夏、青森のねぶた祭を見に行ったときのことだ。
「初めて泣いた、祭りで。あまりの人の熱量と、それにかける東北の人たちの、夏のこの一瞬の5日間にかけるパワー。見ている方が感動する。初めてでした。」
八戸では、飲み文化が神戸以上に盛り上がっていたという。歩いていると街の周りでみんな飲んでいて、帰るときは代行で帰るぐらいの勢いがある。沖縄のエイサーもそうだった。好きな人が集まって、市民が虜になるような感覚。
「関西だとだんじりみたいな感じがすごい素晴らしいじゃないですか。えべっさんの祭りとかも素晴らしいと思うし。」
そして、街の姿そのものについて。
「どうしても、神戸は都市的な、画一的な作り方になりすぎちゃったから。ビルとか。でも、そうじゃないんだよなと思います。」
もちろん、簡単な話ではないことも分かっている。市と街と、そういうものがもっとリンクすればいい。ただ、そこにはお金の問題がある。震災を経験した街であることも、理解している。
「多分、なかなか難しいところはずっとあるなと。」
そして、最後の言葉は、宣言ではなく、意思表明だった。
「何かそういうもの作りとか、きっかけ作り。神戸が魅力的に思われることには、何かしら関わっていきたいなと思います。」
料理人ではない、と言うが、時間の価値という一点を選んで7年目に入った。大衆居酒屋、ナチュラルワイン、餃子とジン、もつ焼き。業態は毎回まったく違う顔をしているが、そこに並ぶのは”ふつう味”の料理だ。そして選ばれた理由をたどると、いつも同じ場所に行き着く。誰かが誰かと過ごす時間を、どう最大化するか。
その延長線上に、いま「包む時間」を売る餃子がある。店の中では完結しない商売を、始めている。
神戸の余白をどう埋めるか、という問いにも石原氏は同じく策を見出していくのだろう。
そこには、まず自分でやってみる、という方法に時をかけているからかもしれない。
■会社情報
会社名:合同会社TABEARUKI
代表者:代表 石原 優樹
所在地:〒650-0022 兵庫県神戸市中央区元町通1-7-2 ニューもとビル2F
設立:2019年5月
事業内容:フードコミュニケーションビジネス(飲食店経営、オリジナル商品の企画・製造・販売、農業)
ミッション:「TOKIは食べるひと時 その価値を最大化する」
沿革:2019年 TOKI・スタンドトキ オープン/2020年 TOKI PAO オープン/2022年 オリジナルワイン製造開始/2023年 TOKI農園開始/2024年 SWALLOW TOKI オープン/2025年 トキシラズ オープン
公式サイト:https://toki-tabearuki.com/
■店舗情報
TOKI
店名:TOKI(トキ)
業態:大衆居酒屋「みんなが心地いい、あたらしい大衆居酒屋」
住所:〒650-0022 兵庫県神戸市中央区元町通1-7-2 ニューもとビル2F
アクセス:JR元町駅より徒歩約4分/神戸市営地下鉄「旧居留地・大丸前」駅より徒歩約3分
営業時間:ランチ 11:30〜14:00(L.O. 13:30)/ディナー 16:00〜23:00(L.O. 22:30)
オープン:2019年11月25日
TEL:078-599-8199
Instagram:@toki_motomachi(https://www.instagram.com/toki_motomachi/)
SWALLOW TOKI
店名:SWALLOW TOKI(スワロウトキ)
業態:フュージョン料理とワイン「駆け出しフーディーに大人の階段を登る食体験を」
住所:〒650-0022 兵庫県神戸市中央区元町通1-7-2 ニューもとビル1F
営業時間:平日 16:00〜22:00(L.O. 21:30)/土日祝 14:00〜22:00(L.O. 21:30)
オープン:2024年(前身の立ち飲みイタリアン「スタンドトキ」は2019年11月開業)
TEL:078-599-8220
Instagram:@swallowtoki_motomachi(https://www.instagram.com/swallowtoki_motomachi/)
TOKI PAO
店名:TOKI PAO(トキパオ)
業態:クラフトジン40種類以上と手作り餃子
住所:〒650-0012 兵庫県神戸市中央区北長狭通2-7-12 PMPTビル103
営業時間:16:00〜23:00(L.O. 22:30)
オープン:2020年
TEL:078-381-8021
Instagram:@toki_pao_sannomiya(https://www.instagram.com/toki_pao_sannomiya/)
トキシラズ
店名:トキシラズ(TOKISHIRAZU)
業態:もつ焼き居酒屋「もつ焼きを神戸の新たなカルチャーに」。炭火で焼き上げる新鮮ホルモン
住所:〒651-0094 兵庫県神戸市中央区琴ノ緒町5-3-5 グリーンシャポービル B1F
アクセス:神戸市営地下鉄三宮駅より徒歩1分/JR三ノ宮駅・阪急神戸三宮駅より徒歩2分/阪神神戸三宮駅より徒歩3分
営業時間:17:00〜23:00(L.O. 22:30)/不定休
オープン:2025年10月1日
席数:35席
予算:¥3,000〜¥3,999
TEL:078-855-7728
Instagram:@toki_pao_sannomiya(https://www.instagram.com/toki_pao_sannomiya/)













