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脈々と受け継がれてきた日本料理の文化や伝統をまっすぐに伝える「お出汁とおばんざい musubu」2019年5月29日オープン

(取材=取材・文/西村由起子)


 京都の町家でほっこりといただく、おばんざいで人気の「おうちごはん 中島家」で知られる株式会社UTSUWA(代表取締役・中島健介)。2店舗目の「京町家おばんざい こはく」に続き、5月29日に3店舗目となる「お出汁とおばんざい musubu」をオープンした。
 同社のutsuwa(器)という社名には「みんなの夢を叶える器になる」という願いが込められており、「人それぞれのらしさを活かして輝くひとを創る」ことをビジョンに掲げている。これまでもその志を実現する形で、店長や料理長の個性や想い、強みを活かした出店を行ってきた。今回の「musubu」でこだわったのは、同社取締役で総料理長も務める緒方氏の言葉を借用すると「日本料理のどまんなか(真髄)」を伝えたいという想いだった。うわべだけを理解したり、なぞらえたりするのではなく、とことん日本料理と向き合った結果、その奥深い魅力に心酔した緒方氏だからこそ創ることができたお店だと言える。時には彼なりの解釈も交えながら、先人の知恵と工夫に敬意を表し、脈々と受け継がれてきた日本料理の文化や伝統をまっすぐに伝える姿勢が心地よい。
 
 例えば、日本料理で欠かせない出汁。緒方氏の熱意にほだされた業者がmusubu専用にブレンドした鰹節を用意。来店客へのお通しにその出汁を使った椀物が提供されるのだが、雑味のないすっきりとした出汁が素材の持ち味を引き立てる、その奥ゆかしい旨さに感動する。この出汁は、出汁巻きはもちろん、同点名物のポテトサラダにも隠し味として使われている。運が良ければ、緒方氏がカンナで鰹節を削る姿も見ることができる。鮮度自慢のお造りも、醤油とわさびでいただく以外に、江戸時代からある調味料の煎り酒や、鰹じお、洗い酢味噌などと実に味わい豊かで、驚く。昔ながらの調味や製法に疎くなってしまった現代人の舌には、こうした伝統の味がとても新鮮に感じられるのだ。
 
 「この店は緒方が主役」と語るのは、中島氏。こうした仲間はもちろんお客様や業者とも「幸せな大家族」のような関係性–互いの幸せを願い、成長や成功を喜び合う関係–を築きたいと考える中島氏の想いが、このmusubuでもしっかり受け継がれている。
 中島家、こはく、musubu。いずれも京都/町屋/おばんざいをベースとしながらも、それぞれ設定するゾーンや客単価はバラバラであり、店主の想いや強みを活かした個性豊かな3店となっている。各店が四条烏丸や河原町にほど近い田の字地区に位置し、いずれも徒歩15分圏内にあるから、常連客が行き交える距離感だ。立地がら、観光客の集客も視野には入れているが、あくまでも「地元客」に愛されるお店づくりを行い、「お帰りなさい「「行ってらっしゃい」と声をかけるなど、ほのぼのと温かい接客を推進している。中島氏によると「少なくともあと2店舗はこのエリア内での出店を計画している」とのこと。どんな夢や想いの詰まった店舗が誕生するのか、楽しみで仕方ない。

店舗データ

店名 お出汁とおばんざい musubu
住所 京都市中京区山崎町245-4
電話 075-231-5515
営業時間 17:00~24:00
定休日 不定休
運営会社 株式会社UTSUWA(代表取締役・中島健介)
オープン日 2019年5月29日

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