12月4日、扇町公園内にオールデイダイニング「Botanico(ボタニコ)扇町公園」とテイクアウト店「扇町茶屋」がオープンした。大阪市より委託を受けた複数の民間企業から成る「扇町公園スマイルパートナーズ」による公園開発の一環で、飲食部門の協力企業としてゼットン(東京都渋谷区、代表:鈴木伸典氏)が運営する。これまでも葛西臨海公園をはじめ名古屋の徳川園、横浜の山下公園など、各地で公園の魅力向上事業を手掛けてきたゼットンが次に挑むのは、大阪・天満近くで多くの人に親しまれる扇町公園だ。飲食店の力で公園に新たに人を呼び込み、もともとの利用者にとっての満足度も向上させ、新たな価値をプラス。同社が掲げる理念、「店づくりは、人づくり 店づくりは、街づくり」を実現する。
下町の飲み屋街・天満にないレストランを
2019年の葛西臨海公園を皮切りに、近年、公園事業に注力していることで代表の鈴木伸典氏が「2023年外食アワード」を受賞したゼットン。次なるプロジェクトは大阪の扇町公園だ。これまで手掛けた公園事業はゼットン主導の事業が多かったが、今回の扇町公園は、公園の管理業務を大阪市が民間企業に委託したグループ「扇町公園スマイルパートナーズ」の、協力企業としてゼットンが飲食部門を担当したかたちだ。
ゼットンは飲食部門として「Botanico扇町公園」と「扇町茶屋」をオープン。これらのオープンの経緯について、店舗責任者である鷹羽啓之介氏はこう話す。「『Botanico扇町公園』の店づくりについては、まずこのエリア特性からどんな店が必要なのかを考えました。ここはすぐ近くには天満があり、天満と言えば大衆的な下町の飲み屋街というイメージが強い。手ごろな価格で気軽に飲める赤提灯の店はたくさんありますが、例えばちょっとした記念日や、家族や恋人と落ち着いた食事に使えるレストランは多くありません。ですが、梅田から1駅と都心でありながらも住宅も多いベッドタウン。そうした人たちが、わざわざ梅田まで行かなくてもニーズを満たせるレストランを目指しました」。
「Botanico扇町公園」は、緑豊かな扇町公園を「ボタニカルガーデン」と捉え、それに溶け込むように「自然」「天然」「植物」をテーマにした空間に仕上げた。提供するのは、地中海料理をベースにしたイタリアンこと「メディタリアン」。ゼットンハワイで活躍するシェフの吉本圭吾氏が監修し、地中海周辺のフランスやギリシャ、トルコのエッセンスを交えながらも、ハワイや日本の要素も織り交ぜた創作的な料理を用意しているという。朝は焼きたてのパンやフレッシュジュース、地元野菜をふんだんに使用したランチの前菜・サラダビュッフェ、ディナーはジャンルレスな料理と、1日を通じて利用できる。
元の公園利用者の満足度を上げる「扇町茶屋」
一方の「扇町茶屋」は、江戸時代に旅行者や通行人が気軽に立ち寄った「茶屋」という名前からも、公園を利用する人が気軽に立ち寄れるテイクアウトショップだ。カレーパンやどら焼きといった軽食やスイーツ、昔懐かしい駄菓子までを販売。「今まで扇町公園は多くの人が利用するにもかかわらず、売店がなく何かちょっと食べたり飲んだりしたい時も近くのコンビニに行くしかなかった。『扇町茶屋』では公園利用のついでに楽しみたいフードやドリンクを揃え、公園の利便性や満足度を上げる目的でオープンしました」と鷹羽氏は話す。フードやドリンクだけでなく、遊具のレンタルも行っている。
人のつながりを創出、「公園の価値を上げる」再生事業を
「Botanico扇町公園」が扇町公園に新たに人を呼び寄せる施設なら、「扇町茶屋」は既にいる利用者の満足度を上げるための施設だ。「何もなかったスペースに『Botanico扇町公園』と『扇町茶屋』を作ったので、新しい価値が生まれると思っています。実際に、これまで扇町公園で個々に犬の散歩をしていた人達が、『扇町茶屋』に立ち寄るようになったことでワンちゃん仲間として交流が生まれるようになっていて。人とのつながりを生み出せたことにすごく意義を感じています」と鷹羽氏。
今後ゼットンの公園開発については現時点の計画は非公開だが、「公園の価値を上げる」というミッションは変わらないという。「利益の追求というよりも『こんな公園あったらいいな』という思いや、僕らだからこそやる意味がある案件を全国で手掛けていけたらと思っています」と話す。人々の生活インフラとしてなくてはならない公園に新しい価値を生み出し続けるゼットンに今後も注目したい。