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「浪花の妖怪」の後を継ぐ!元気ファクトリー新社長、石塚祐二氏インタビュー

1982年、大阪島之内の喫茶店からスタートし、いまでは大阪を中心に国内外で焼肉店を中心に展開する元気ファクトリー。創業者の今吉純一氏は、その豪快な経営手腕から「浪速の妖怪」と呼ばれ、大阪の飲食シーンではよく知られた存在だ。、2023年11月、そんな今吉氏が会長職に就任し、石塚祐二氏が二代目社長に就任した。今回は、「浪速の妖怪」の後を引き継いだ石塚氏の知られざる肖像を始め、新体制になり新たに取り組んでいること、今後の元気ファクトリーについてインタビューした。


石塚祐二氏

1982年、埼玉県生まれ。元気ファクトリーの「焼肉どんどん 新宿歌舞伎町店」のスタッフとなり、飲食の道へ。入社20年目となる2023年11月、代表取締役に就任。「ゴリ」の愛称で親しまれている。

 


母に勧められるままに飲食業へ。“ボス”こと今吉氏との出会い

―二代目社長に抜擢された石塚さん。まずは石塚さんのこれまでについて教えてください。飲食の仕事はいつから?

石塚氏:飲食業に進んだのは、高校を卒業して特に就職もせず、どうしようか思い悩んでいた時に母から「あなたはしゃべるのが好きなんだから飲食店がいいんじゃない」と言われたのがきっかけでした。そこで求人誌を開いたらたまたま新宿歌舞伎町の「焼肉どんどん」が目に入りました。「バーカウンターで楽しむ焼肉」という文言に惹かれ、また当時は実家の埼玉に住んでいて、東京で挑戦したい気持ちもあり応募しました。

―そこで元気ファクトリーに出合ったのですね。大阪を中心に展開していましたが、「焼肉どんどん」は東京の新宿歌舞伎町にもありました。

石塚氏:求人誌には「髪型自由」とありましたが面接には髪を黒く染め直し、スーツを着て行きました。そうしたら「そんなのしなくていい」と言われ、早速働くことに。個人店のように自由にやらせてもらっていたので、あんまり大阪本社の企業で働いているという認識はなかったです。でも、たまにボス(今吉氏)がお店を訪れるんです。だいたい東京で何かのイベントがあった際、過密スケジュールの中を縫って臨店していました。ボスの店を見る目付きは常に鋭く、ごまかしはすぐに見抜かれる。すごい人だ、と思ってボスが店に来るたびに「俺、ゴリといいます!」とアピールしていました。

2001年にオープンした新宿歌舞伎町の「焼肉どんどん」。歌舞伎町の様々な人が訪れる。写真左のスタッフが、当時の石塚氏

2001年にオープンした新宿歌舞伎町の「焼肉どんどん」。歌舞伎町の様々な人が訪れる。写真左のスタッフが、当時の石塚氏



「歌舞伎町のゴリ」が大阪で社長になるまで

―石塚社長と言えば「ゴリ」という愛称で有名ですが、当時からの呼び名なんですね。

石塚氏:はい、それでボスに顔を覚えてもらいました。歌舞伎町時代にはリーマンショックや東日本大震災もあり、大変だった時期もありました。当初は東京から離れる気はなく、元気ファクトリーの東京事業を分社化しようと思っていました。その布石として東京でラーメン店の立ち上げも行いましたが、うまくいかず。そこでボスに「東京と大阪、半々で会社全体を見ないか」と誘われ、東京と大阪、2拠点の統括マネージャーになりました。しかし、大阪では私が関東人だというのが引っかかるのか部下が言うことを聞かない。四苦八苦する中、当時の会社のナンバー2が独立で辞めることになり、私にそのポジションに声がかかりました。それを受けることにすれば、拠点を大阪に完全に移すことになる。東京にいたい思いもありましたが、ボスが自分を見出してくれたと思うと自然と覚悟が決まりました。大阪に移ると、私の覚悟が伝わったのか自然と部下もついてくるようになり、営業本部長から取締役に昇格。ついに2023年11月、ボスに変わって社長を務めることになりました。

―社長交代の経緯は?

石塚氏:途中まで東京の事業を分社化で譲ってもらうことを目指していたので、まさか自分が元気ファクトリーの社長になるとは思っていませんでした。社長交代の話は去年以前からしていました。でも「3年後」と聞いていたのに、ボスが突然「3年後は遅いから今年な!」と(笑)。「浪速の妖怪」の後はプレッシャーもありますが、断ろうとは思えなかった。選んでもらったからには「もっと真剣にならないと!」とより一層の気合いが入りました。元気ファクトリーがなければ今の自分はありませんから。すぐに話が決まり、盛大に社長就任式も開いてくれました。そういうのもボスらしいなと。

―なぜ自分だったのだと思いますか?

石塚氏:う~ん、なんでしょう。ボスと自分の「店への向き合い方が似ているから」かもしれません。ボスは商品、内装、戦略、すべて自分で手掛けてきた。自分も日々アンテナを張って、よりよい店にできるよう一つ一つ、細かいところまで向き合っている。今まで商品開発はボスが行っていたのですが、私がボス以外で初めて任された。そういう店への向き合い方をボスに評価してもらったのかなと思っています。


「会社という船がどこに向かっているのか」スタッフに示す

―石塚さんが社長になって取り組んでいることは。

石塚氏:元気ファクトリーのいいところは残しながらも、時代に合わせて変えなければならない部分もある。そこをクリアできれば、うちの良いところがもっと発揮されると思っています。社長に就任してからボスからも「やりたいことをやれ」を言われていましたので、最初に人事制度や就労環境の整備に取り組みました。

―その意図は?

石塚氏:スタッフに「会社という船がどこに向かっているのか」を示したかった。高い目標を掲げるのはいいのですが、そこへたどり着くまでに何をどうするのか、道のりを示さないと人はついてこない。当社は2027年にグループ連結で年商50億円を目標にしています。そのための具体的なロードマップを明らかにすればスタッフにとっても現実味のある目標になりますし、個人のキャリアアップにもつながると思うんです。

―具体的には?

石塚氏:コンサルの力を借り、評価制度を見直しました。具体的に、何をしたら昇給するのか、逆に何が足りなければ降格なのかもわかるようにした。昇給審査は年4回にして、チャンスも増やす。スタッフが納得して働ける環境を目指しています。労働環境の整備も行い、給料も上げて残業を減らし、休日も増やしました。今後、年商に応じて福利厚生も充実させていく予定です。

元気ファクトリーのHPより。採用情報を充実させている

元気ファクトリーのHPより。採用情報を充実させている


―時代ですね。

石塚氏:私の歌舞伎町時代は、朝の9時まで営業していました。昔は20代だから体力があったけど、もし年を取って家族が増えたら続けられるのかはわからない。今は独立志望の人も減り、そういう人も長く働ける環境にしていきたいんです。

―その効果はありましたか?

石塚氏:採用の応募数が各段に増えました。異業種からの転職など、以前はこなかったような人からも応募があったり。今は種をまいている段階ですので、ここからどう咲かせるかが大事ですね。外国人採用にも注力し始めました。残業をなくすなど今いるスタッフも働きやすくなり、人手不足は世間で言われるほど感じていません。


石塚氏がいつもスーツのワケとは…?

―元気ファクトリーの今後の展開について教えてください。

石塚氏:当社はやっぱり焼肉が強いので、「焼肉どんどん」を中心に展開したい。とはいえ、朝5時まで営業している業態なので、スタッフの働き方を考えると時代に合わない部分もある。そこで、昼飲みを打ち出している「ホルモン肉五郎」や、ラーメン業態の「煮干しラーメン玉五郎」も打ち出していきたい。特に「肉五郎」は「安い・早い・うまい」をコンセプトにしており、天満に2店舗ありますがハッピーアワーで集客が好調。天満の「博多串焼きバッテンよかとぉ」もやはりハッピーアワーで好調です。天満は酒場激戦区でお客様の目は厳しい。ここで成功できれば強い業態だと思うので、新ブランドを出す際はまずは天満で育てて、そこから大阪他エリアや博多などに広げていければ。今まで街場で出店してきましたが、2024年7年に出店した大阪駅の商業施設「バルチカ03」内の「博多串焼きバッテンよかとぉ」も好調で、意外と施設もアリだな、と感じています。

「バルチカ03」にオープンし好調の「博多串焼きバッテンよかとぉ」

「バルチカ03」にオープンし好調の「博多串焼きバッテンよかとぉ」


―最後に。飲食企業の社長は、社長と言えどラフな格好の方も多い中、石塚さんはいつお会いしてもスーツでキメています。何か理由があるのでしょうか?

石塚氏:昔は私もラフな格好でいました。ボスもいつもラフですし。でも、誰に言われたわけでもなく、だんだん違うと思い始めた。適当な格好をしていると部下から見くびられることもあるし、自分の上司であるボスもバカにされてしまうかもしれない。高いけどオーダースーツを作っていつも着るようにしています。現場でサロンを巻くときに気合が入るじゃないですか。そういう感じ。カタチから入るタイプなんです。

―いつも明るく周囲を笑わせてくれる石塚さんですが、やるときはビシッと真面目にキメてくれる。これからの元気ファクトリーにも期待が高まります。本日は貴重なお話をありがとうございました!


 

元気ファクトリー
2025年で創業30年。「焼肉どんどん」「ホルモン肉五郎」「博多串焼きバッテンよかとぉ」「煮干しラーメン玉五郎」など、大阪を中心に東京、神戸、博多、シンガポール、マレーシアなどで直営、のれん分け、FC合計で40店舗を展開。

元気ファクトリー(HP):https://www.genki-factory.com/

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