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インタビュー

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活車海老を破格で提供し、人気を確立した立ち飲み店「わすれな草」代表取締役・中西亮太氏が語る、社長としてではなく“現場のいち職人”としての組織構築

肥後橋の立ち飲み店「本格カレー&一品料理わすれな草」、梅田のカウンター居酒屋「酒場やまと」率いる、有限会社わすれな草の代表取締役・中西亮太氏。この2軒について同氏に取材を敢行し、2010年12月28、29日のヘッドラインにも掲載したが、インタビュー中には組織体系の話も飛び出した。実のところ、同グループの店舗数は2店舗ではなく全9店舗。それぞれ経営者を置いた独立店舗で、グループとしては個人経営者の集合体という。ここでは、あらためて滅多にメディアに登場しない同氏のプロフィールから、独自の「現場目線」に立った組織作りについて紹介したい。



――1号店「わすれな草」から最新店「酒場やまと」オープンまでの間に7店舗を展開されていたというのは初めて知りました。

ええ、これまでほどんど公表していませんでしたから。というのも、それぞれの店は私が直接経営しているのではなく、店長が代表取締役となり経営と運営をお任せしている状態なんです。だから、店名はすべて違うしメニューや特徴も違なる完全な独立採算制。「わすれな草」から派生した形ではありますが、お客様からすれば各店舗の関連性がないように映ると思います。
 

――各店ごとに社長が存在すると。その形態になった背景を教えてください。

まったく自然発生的なものです。僕自身は、「わすれな草」を広めて店舗数を増やしたいとか経営者として何十店舗も運営したいという気持ちはなかったんですね。ただ、店を僕ともう一人パートナーとなるスタッフと二人で回していたら、どうしてもいずれはパートナーさんが独立するかどうかという話になります。僕としては優秀だから引き止めておきたいけれど、本人のことを思えば応援もしたい。で、いい物件が見つかり次第、そこで店をやってみようとなって。その繰り返しで、2つ、3つと店が増えていったというシンプルな話です。ただ、そのパートナーさんが独立しやすい形やモチベーションのことを考えた結果、出店費用は僕が100%出資し、その後の経営はすべてお任せするスタイルに至りました。ですから、みなさんは独立イコール、店長であり社長さんになっているんですね。「酒場やまと」だけは例外で、ビル側との契約の都合上、私が代表取締役となっています。
 

――各店の経営者さんとはどのような契約ですか?

まず、1年間だけは私からの固定給をお支払いし、出資にかかった費用は開店後、5年~10年かけて売上から返済していただく契約です。その返済が終われば、権利関係も含め完全に店の運営を委ねる形です。あとは、アルバイトさんを採用しようが自分が頑張って働いて利益を増やそうがまったく自由。それが一番、みなさんのモチベーションが保てる方法だと思うんです。経営者としての意識も身に付いていきますしね。料理一筋で腕をふるってきた方が多いですから、経営者の視点を持つことは特に大切だと思っています。


―― 一般的に多いのは、経営から手を引かず店舗の運営のみを任せてマージンを取る方法ですが、あえてすべてをお任せしてしまうと。

そうですね。普通は複数店舗の組織の代表であれば、自分は事務所で作業し、経理を雇い・・・と、店の運営自体は現場スタッフに任せると思うんですね。でも、その形で利益を出すには、メニューの原価や現場スタッフの給料を下げないと無理なわけで、スタッフのモチベーションは必ず下がります。各店舗を独立させているのは、そんな状態にしたくないからでもあるんです。ただでさえ飲食業は労働条件に恵まれていないことが多いし、日々の仕事だけで疲弊して優秀な方が能力を発揮するチャンスも少ない。そんな現状を変えたいという気持ちもあります。
 

――なるほど。原価率の話が出ましたが、いまはどれくらいですか?

店舗にもよりますが、35~40%です。客単価2000円台でその原価率というのは大変高い割合ですが、どの店舗も経営者自ら現場に立っているため調整はしやすい。僕が現場に立ち続けているのもそのためですね。高級な雰囲気のお店でビール飲んだら800円とか1000円でしょう? 原価はいくらだって話ですよね。うちでは380円でおいしく飲んでもらいたいし、生しぼりのフルーツ系カクテルも置いていますがそれも380円。手間ひまはかかってもやろうと思えばやれることです。価格を上げない努力は惜しみたくないですね。


――各店舗はどのようなお店ですか?

「酒場やまと」以外の8店舗が肥後橋や本町界隈に集中していて、それぞれ特徴があります。明石焼きと活けダコをメインにしたお店、寿司をメインに一品料理も充実させたお店もあれば、なかにはドジョウの蒲焼を売りにしているお店もあるんですよ。今回、2010年の12月にオープンした「酒場やまと」は、明石焼き、一貫からできる寿司などメニューは約60種で、これまでの各店舗の個性が集まった構成になっています。


――「酒場やまと」のオープンに際して、周囲のスタッフからは何か意見がありましたか?

「酒場やまと」はオープンの1年半くらい前から、一カ月に1回各店舗の店長さんやサッポロの営業の方にもお願いし会議をしてきました。大阪富国生命ビルの出店については、みんな賛成でしたよ。近代的で洗練された空間と酒場という組み合わせの妙、女性客も見込める勝算もありましたから。店名や厨房器具の配置、壁の色など、全部話し合いをもとに決め、店名は僕のアイデアです。ビル全体を外国の方がデザインされてオシャレな空間になると聞いていましたから、ここはあえて日本ならではのベタなカウンターの酒場文化で、“大和魂”を見せてみようと思って。スタッフからも「いいっすねー!」と賛成してもらえてよかったです(笑)。

――スタッフさん同士のチームワークの良さがうかがえます。

みなさん経営者・次期経営者同士ですしね。考えていることも悩みも同じだし、話が合うんですよ。肥後橋に1軒バーがあって、みなさん自然とそこに集まっていたりするんです。気がつけば見慣れた顔が10人揃っているという(笑)。

――今後の展開を教えてください。

おかげさまで、オフィスビルやデパートからのテナントのお誘いはたくさんいただいています。今回のように、はっきりと店の内容や方向性のイメージができれば出店していきたいですね。ただビルの上階はちょっと違うかな、と思います。あとは、やはり「人」ありき。人が育ってファンになってくれるお客様がいないことには、いくら店舗数を増やしても意味がない。よく「○店舗達成!」とか聞きますが、僕は数字を追うことにはまったく興味がありません。現状は2011年にあと1店舗出せるかどうかというところです。
 
 

――ちなみに、中西社長自身はどのように?

いま36歳なんですが、45歳には引退したいと思っているんですよ。

――ちょっと早いような気もしますが?

それくらいで引退して、釣りを楽しめるようになるのが夢なんです。いまは忙しくて全く行けてないので。避けたいのは、現場に立っていないのに口だけを出す経営者になること。そんなの机上の空論ですからね。キレイに身を引いて、小さい頃遊んでいた明石の海に釣り糸を垂れる・・・・・・。そんな生活に憧れます。まあ、すでにここ半年くらい休めていないのでどうなるかはわかりませんが(笑)。

1号店「わすれな草」は11年目を迎え、店は連日満員御礼。カウンターは14人という設定だが1日の集客はおよそ80人というモンスター店を、いまもなお、中西氏ともう一人のスタッフで回転させている。社長としての業務は定休の日曜にしかできず多忙を極めるが、それでも現場にいち職人として立つことにこだわり続ける同氏。組織が大きくなるほど希少になる「現場主義」の経営者として、45歳までとはいわずさらなる活躍を期待したい!                                                                                              



●わすれな草
 
大阪市西区江戸堀1-14-1 平和相互肥後橋ビル102  tel.06-6445-7575
●酒場やまと  
大阪市北区小松原町2-4 大阪富国生命ビル フコクフォレストスクエアB2F tel.06-6312-3955

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