飲食店・レストランの“トレンド”を毎日配信するフードビジネスニュースサイト「フードスタジアム関西」

ヘッドライン

30年後もあり続けるための空間、メニュー、価格設定の絶妙バランス 和バルとは一線を画す立飲み店、裏難波「立呑 丑寅(うしとら)」

-thumb-1200x1600-2136.jpg
地下鉄御堂筋線、難波駅から徒歩5分。無印良品の西側の路地に提灯が点る。
-thumb-1600x1200-2138.jpg
暖簾をくぐり、カウンターが空いていればラッキー。26人ほどで満員となる。
-thumb-1600x1200-2140.jpg
メニューはカウンターの上、または入って右側にはられている黒板をチェック。内容は頻繁に変わるが、取材時は「秋刀魚とゴボウの有馬煮」「ワケギ塩昆布和え」「砂ズリのニンニク醤油漬け」……渋い。財布に優しい250~500円。
-thumb-1200x1600-2142.jpg
趣がありすぎる酒のメニュー札。日本酒は週替わりで4種類を揃えている。その下には「長居無用」の張り紙が。3人以上のグループ客もなるべくお断り中。
-thumb-1600x1200-2144.jpg
まだまだ謎が多い店主の中山氏。センスの引き出しを探るも、「別に歴史好きでもないし、家のインテリアとかも普通ですよ」。現在は別店舗で腕をふるう。

キタに比べ、「(景気的に)地盤沈下」と言われがちなミナミだが、難波周辺には不景気とは関係なく賑わう個店が少なくない。それぞれ人目を避けるかのように、難波の西側の通称“座裏”や法善寺の東側路地“坂町”、最近ではNGKから堺筋通りまでの一帯“裏難波”に続々と出店し、メディアで話題となっている。その裏難波の中で群を抜く人気店が「立呑 丑寅(うしとら)」だ。オープンは2006年11月(現在の場所へは2009年11月に移転)。営業時間6~7時間で、キャパ26人ほどの店内に1日平均90人が来店する。開店17時(土曜は16時)から閉店23時まで、お客は隙あらばカウンターに滑り込み、中には仕込み中から入店をうかがう強者も。人気の理由は、と考える。今の季節なら、蕪や小芋、ブリなど旬の素材を使った手作り料理が250~500円、単価1700円という安さがひとつ。難波駅から徒歩5分と至便な場所ながら、一本入った静かな路地というのもしかり。ぼんやり点る裸電球に、煤けた壁やカウンター。ぐい呑みに使うにはちょっと大きい、朴訥な土の湯飲み茶椀。派手な張り紙やメニューブック、過剰な接客もBGMもない、一切の無駄をそぎ落とした無骨な空間も、とにかく絵になる。昭和の映画やドラマの中にあるような、清く美しい立飲み店なのだ。店主は中山恵太氏、39歳。大学を卒業後、アミューズメント系企業が新たに立ち上げた飲食事業の店舗開発担当として就職した。1年後に退職し、その後3~4年間はフリーターとして飲食店を転々とし、6店舗目に入った坂町の立ち飲み店での経験が転機となる。「店はお水系の方、馬券場帰りの方などさまざまで、人種のるつぼでした。賑やかな店だったけど、皆、酒に向き合う潔さがかっこよかった。そんな潔さにより重きを置いた、自分なりの酒場をやってみたいと、一か八か独立しました」。出店場所に決めたのは、セオリーとは真逆の「人通りのない場所」。6年前の裏難波はまさにひと気がなく、周辺は真っ暗だった。そこで2坪の店舗を看板も出さず開店。初めは閑古鳥が鳴き、オープンしてから2年後にようやく満員になってきた段階で、「このキャパではいくら満員でも儲からない」と気づき、現在の場所に移転したのだとか。そんな中山氏にとっての「飲食店」とは儲けのツールではなく、自己表現の場。まず自分が行きたくなる店を作り、お客にいい時間を過ごしてもらい、5年~10年通い続けてもらう。流行とは関係ない普遍的な業態で、30年後にはその街の呑ん衛たちになくてはならない「止まり木」のような存在になることが理想だ。そのための立飲みスタイルであり、単価1700円という価格設定であり、侘びた空間づくり。「丑寅」のヒットの理由は、その絶妙なバランスにあるのかもしれない。「もし“和バル”がトレンドなら、そことは距離を保ちたいです。でないと、ブームに飲み込まれてしまう気がします」と中山氏。だから一時、「丑寅」が雑誌の表紙になり電車の中吊り広告にまで登場した時は、戸惑った。遠方からわざわざ来る若い層や女性客が増え、予想外の爆発的人気となったのだ。しかし、中山氏は冷静だ。「よく、立飲みで出てくる以上の料理だと驚かれていました。でも、もう驚かれる時期は過ぎたし、僕がやりたいのはギャップへのアプローチではなく、350円なら350円の中でいかにきちんとしている料理であるかどうか。シンプルで少し手が込んでいて、あくまで立飲みのアテであることが大切だと考えています」。立飲み店がじわじわ増えているこの頃、「丑寅」のスタイルに憧れる経営者も多いはず。何かアドバイスするなら?「立飲みは和食やフレンチとかに比べて型がなく自由にやれます。同じやるなら一生を捧げられるような、自分がカッコいいと思う店をしたらいいと思います。立飲みで、マーケティングがどうのとか、時流を飲む必要はないんじゃないでしょうか」。

(取材=横田ちはる)

店舗データ

店名 丑寅(うしとら)
住所 大阪市中央区難波千日前15-19
アクセス 地下鉄御堂筋線「なんば」駅より徒歩5分、南海電鉄「難波」駅より徒歩3分
電話 090-8126-8379
営業時間 月~金曜17:00~23:00、土曜16:00~23:00、日曜16:00~22:00
定休日 祝日不定休
坪数客数 10坪・26席
客単価 1700円
関連リンク 丑寅(食べログ)

 >> 大きな地図を見る

ヘッドライン一覧トップへ

Copyright © 2014 FOOD STADIUM KANSAI All Rights Reserved.